第36話『梅干し』@ 0202◆7fx3VkTePk 様
友人の祖母は半分自給自足をしている田舎暮らしの人のため、漬物や干し野菜など、保存食をよく作るそうだ。 けれど一つだけ作らないものがある。それは梅干しだ。 祖母の畑には梅の木があり、毎年それなりに実をつける。それを使って梅酒は作るのに。 「どうしてお婆ちゃんは梅干しだけ作らないんだろ?」 「昔は作っていたのよ」 ある時ふと漏らした友人の疑問に、彼女の母親は複雑な表情で答えた。そうしてその理由を教えてくれた。 「お婆ちゃんの梅干しはとてもおいしかったんだけどね。 私が子供の時に、その年作った梅干しが全部カビちゃったことがあったの。 お婆ちゃんは『ああ、また・・・』って苦しそうな顔してね。 上手なお婆ちゃんが失敗するのも珍しいとは思ったんだけど、 その時は(なんのことだろう?)っていうくらいだったかな。 それから一か月しないうちに近親者が突然亡くなって。 次の年から梅干し作らなくなって。 理由を聞いたら悲しそうな顔して笑うだけ、でもその顔を見た時に、 多分前にも梅干しがカビた時に誰か死んだんだって子供ながらになんとなく理解したわ」 「生ものだし偶然でしょ?」 友人がそう問いかけると、母親は苦笑して答えた。 「二度あることは三度あるなのか、本当に偶然かどうか確かめるのって、結構勇気がいると思うけど?」
