第3話『恐怖の犬小屋』@ 川瀬 ◆8DcQWhttmU 様

むかし、うちの家にクロという犬がいた
俺の小さいころに死んだので俺はあんまり思い出がない。
しかし両親にとってはとても愛着があって家族同然のペットだったようだ。
クロが死んだ後、両親は新しいペットを飼おうとしなかったので、クロの思い出が残る犬小屋は
空き家のまま庭にぽつんと残された。
俺の10歳年下の妹は小さい頃からこの犬小屋に近づくのをとにかく嫌がった
何故だかわからないが酷く怖がっていた
一度、妹のゴムまりが犬小屋の後ろに行った時、妹が泣きながら怖いので取ってきてと頼む
ので、なんで犬小屋が怖いのか訊いたら「中に怖いやつがいる」という。
もちろん犬小屋は空き家なのだが、妹は絶対にいる、と怖がっている。
ゴムまりを取ってやった後で俺や父が中を覗いてみたが何もいなかった。
しかし母によれば、近所の人から、お宅のペットが夜に変な声で吠えてうるさかった、と何回
か苦情が来た事がある と言うのだ(うちにはクロが死んで以来ペットはいないのに)
母は、何かいるのかねえ と、不気味なことを言う。
実は俺も夜中に犬小屋のあたりから大きな叫び声のような声(犬のなき声ではない)を聞いた
ことがあったため本心では心細かった。

そして中学3年のある晩、大雨の夜だったが、勉強を終えて寝ようとすると2階の窓の所で
父が俺を無言で手招きしているのに気付いた。
この窓からは あの犬小屋が見えるのだが、父の様子から何か尋常でないことが察せられた
俺は窓のところによって父に言われるまま下を見下ろした、そこにはあり得ない光景が広がっていた。
雨の降りしきる中、犬小屋の入り口から白い人影が入ったり出たりを繰り返している
ひょろりとした格好で雨の中をふらふらと歩き、あたりをうろついた後また犬小屋に入っていく、
2体以上いた。
人間とは思えない、父も「声を出すな」と小声で言った。
次の日 不安に思いながら学校から帰ると犬小屋はきれいさっぱり撤去され、その跡はコンクリ
でガッチリ固められていた。
父が午前中に業者をよんで一気にやってしまったらしい。
いまでもあの夜見たものが何であったかは謎である。