第13話『吸い殻』@ 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM 様
山仲間の話。 夏山で単独行をしていた時のことだ。 朝、食事などの支度を済ませてから、テントを畳もうと外に出た。 すると異臭が鼻をついた。山の中ではまず嗅がないはずの臭い。 きつい煙草の臭いが、テントの外に立ち込めていた。 彼は煙草を吸わない。 首を傾げながら周囲を確認すると、テントを囲むように多量の吸い殻が落ちている。 昨日の夕方ここにテントを張った時には、間違いなくこんな物は無かった。 その内一つは、まだ微かに紫煙を漂わせていた。 どうにも気味が悪く、出来るだけ素早くそこから撤収したという。 その後の山行では、もうそのようなことは起こらなかったそうだ。