第24話『球体』@ 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 様

幼い頃、白くぼんやりと光る球体をよく見ていた。球体は大抵、私が1人で夕暮れ時の町を眺める時現れた。
目撃する頻度はまちまちで、1週間に1度見える時期もあれば、数ヶ月間姿を見せない時期もあった。
球体は、どこかの家の窓から飛び出し、暮れつつある空のどこかに消えていくのが常であった。
その光景はとても幻想的で、夕暮れ時の町を眺めることは幼い私にとって楽しみな時間だった。

ある時、祖父の家の庭で遊んでいると、出掛けており留守だった祖父の部屋から、球体が飛び出すのを目撃した。
私は非常に興奮し、急いで家に入ると祖母の元へ走りよって球体が祖父の部屋から飛び出したことを報告した。
すると祖母は悲しそうな顔をして、球体のことは祖父に絶対話さないよう私を諭した。
私には何故球体のことを祖父に話してはいけないのか全く検討がつかなかったが、祖母の言いつけを守り祖父には一切この話をしなかった。

球体をみた数日後、祖父が亡くなった。就寝中に心臓が止まり、そのまま息を引き取ったらしい。そして祖父の死以降、私は光る球体を見なくなった。
あの球体は何だったのか、今となっては分からない。祖母は10年前に亡くなった。結局球体のことは聞けずしまいのままである。