第25話『ピース』@ 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM 様

サークル仲間の話。

幾つかの仲が良いサークルが集まって、キャンプに行くことにした。
キャンプ自体は大成功で、とても楽しいものだったらしい。
帰ってきてから、その時の記念写真を配っていると、あるサークルの女性が
頻りに首を傾げ始めた。

「ねぇ、この人、あの時いたっけ?」
そう言って、写真に写った一人を指で示す。

「……誰だこの人? 見たこと無いぞ」
「いやこの写真って最後の集合写真だろ。部外者なんて誰も居やしないよ」
「でも実際に写っているし」
「これ撮った時、こんな人いなかったぜ。っていうか俺の隣じゃん!」
すわ心霊写真かと、その場では軽く騒ぎになったそうだ。

「……ってことがあってさ。これがその問題の写真なんだけど」
そう言って、彼は一枚の写真を私の前に差し出した。
仲間達が皆ニカッと笑って写っている、良い集合写真だ。
「どこにも幽霊みたいな人は見えないんだけど?」
私がそう疑問を問えば、彼は前列真ん中にいる一人の男性を指差した。
「この人なんだ。こんな人、この時この場所には絶対にいなかった」

座の中心にしゃがんで座り、元気良くピースサインを作っている男性。
周りの誰にも負けないほどに、満面の笑みを浮かべている。
ただ服装や装備が、周りに比べてかなり古くさい。

「……これ本当に心霊写真なの?
 こっちのこと担ごうとしてるんじゃないの?」と言う私に、
「……皆が皆、そういう反応なんだよなぁ。
 でも仕方ないよなぁ、区別つかないもんなぁ……」
そう苦笑いをする彼だった。

これから二年後に、まったく別の友人から、似たような話を聞かされた。
同じように、その場にいなかった見覚えの無い人物が、集合写真に写り込んで
いたという。

試しに写真を見せてもらうと、やはり件の男性であった。
同じ服装でしゃがみ込み、やはりピースを突き出して爽やかに笑っていた。
白い歯が眩しい。

私が二年前の話を聞かせると、友人はひどく驚いた。
「えっ、これって霊なの?」
「いや、本当にそうなのかはわからないんだけど、この顔だったよ」
そしてやはり、こんな間抜けな会話をすることになったのだった。