9 生き人形~3時にあいましょう~

ところがまた不思議なものですよね。
当時のTBSの「3時にあいましょう」って番組、当時わたしレギュラーやってましたよ。
人形使いの前野さんも曜日は違うけれど、レギュラーやってらっしゃったんですけど。
「その話をやってくれないか」って言ってきたんですよ。
わたしもレギュラーやっている番組ですし、曜日が違っても断れないから、「いいですよ」って返事をしたんです。
もちろん前野さんもOKしたわけだ。お互い番組出ているわけですから。

それでスタジオに行ったんですよ。
スタジオは九段の科学美術館の中にある、千代田スタジオっていう所だったんですけど。
スタジオに行ったら、前野さんはもう着ていて、人形を抱きながら人形の髪をとかしているんですよ。
メイクさんからブラシを借りてね。
もう人形の髪の毛は伸びちゃって、背中のあたりまできているんですよ。伸びているんですよ。髪の毛が。
それだけでも、みんな参っちゃった。

そんな中、前野さんが言うんですよ。
「他の人形はいらないんだ。この人形だけあればいいんだ」って。
前野さんは150位も人形を持っているんですよ?
人形と暮らしているんですよ。人間と同じように。

リハーサルは本番45分前から。
それで当時「3時にあいましょうは、リハーサルの流れのまま本番突入っていう形だったんです。
高視聴率の番組でしたよ。
野村泰治さんってNHKを出られたあの方が「3時にあいましょう」の司会なんだ。

リハーサル開始の時間になって、
「すみませーん!リハーサル入りまーす!」って声がかかった途端に停電。スタジオが停電なんですよ。
大騒ぎですよ。だってこれから本番なんだもん。
月~金まで生放送。その日に限って停電。
ところがこれが不思議なんだ。同じ建物のはずなのに、他は電気がついているんですよ。
このスタジオだけ全部停電。
けど、なんとか本番までに復活しましたよ。

ようやく始まりました。
でも、始まった途端にカメラ一台パー。それで2カメで撮った。
なんだかんだ番組は進んでいって、いよいよ怪談のコーナーの時、
「えー、それでは次のコーナーは水曜日の芸能を担当していらっしゃる稲川淳二さんの、人形にまつわる怖いお話をご紹介致します。」
って野村さんが言う。それでカメラを振るわけだ。
それで洗剤の生コマーシャルが入る。
そしてまたカメラを振ると人形が映るようになっているんだ。
人形はというと、赤い玉砂利の上で、後ろに黒い幕でもって、紙風船をついている。おかっぱ頭で。

野村さんが言い終わった。生コマーシャルにカメラを振って生コマーシャルをやった。
それでカメラを人形に振った。
途端に後ろの幕が全部落ちちゃった。
幕っていうのはさ、いくつもに引っ掛けられてて、一気に落ちるようなもんじゃないんだ。
それが一気に落ちたんだ。それで人形がカクンと動いた。それを見た時はゾーッとしたな。
更にガシャーンってすごい音がして照明が落ちた。
照明なんてきちんと噛ませてあるわけだし、噛ませた上から鎖が巻きつけられているわけだから、落ちっこないんだ。
たとえ噛ませている部分が外れたとしても、鎖でぶらさがっているはずなんだ。
簡単に落ちるわけがない。でも、それが落ちた。

この番組が終わった。
その後すぐ、メインアシスタントの三雲孝江さんではない
別のアシスタントの女性が交通事故に関係してこの番組降りちゃった。
それで、前野さんの友人で、この番組のスタッフが亡くなったんですよ。突然にね。

これはもうショックだったですよ..

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