10 生き人形~久慈霊運さんの霊視~

それで、わたしその時にマエノさんに言いましたよ。「お祓でもいいからいかない?」って。

マエノさん「..ううん..いやあ..」
稲川さん「ね。行こうよ。マエノさん大事にしている人形だからさ。」

わたし知っている方が居たんですよ。大変な霊能者だった。
「だった」っていうのは、残念ながらその方ももう居ない。
久慈霊運さんっていう、巨漢のオバチャンなんだけれども、凄まじい力を持っていたんですよ。
原宿に事務所があるんで、そこにマエノさんを連れていった。人形を包んでね。行ったんですよ。
行ったら喜んでくれたんだけど、久慈さんがわたしの事を呼んで、「勘弁してくれないか」って言うんですよ。
でも、わたしも「先生お願いだから、信じる信じない別だけど気持ちの問題だから。どうにかならないか。もし視れるなら視てくれ」って言ったんですよ。その人形を。
そしたら先生が、「駄目だ」って言うんですよ。「一体これは何に使った人形なんだ」って怒ったんですよ。
「この人形の周りには凄まじい数の怨霊がついてる」って言うんですよ。
で、「その中に動物の霊や子供の霊が憑いてたら怖いですよ」って言うんです。
「無邪気なだけに怖いですよ」って言われたんですよ。
で、嫌だと言うのを無理やりお願いしたんですよ。そしたら、わかったってやってくれたんですよね。視てくれたんですよ。

で、色んな話をしている中でもって、
「一番この子に取り憑いている中で強い霊は、昔ね7つになる女の子がいるんだけど、この子赤い着物を着て日本舞踊を踊るのよ」って言うんですよ。
この人形、赤い着物を着て花柳流踊るんですよ。舞台でね。125センチ体つきも似てますよね。
でも、先生はそれをわかるはずがない。だって、人形は白い布で包んでいったんだから。
で、「空襲で、右手右足とばしてるんだよ」って言うんですよ。
え..?って思った。

それで「お対の人形がいるでしょ?」って言うんですよ。
「少年の人形でしょ?」ってわたしに言うんですよ。
少年の人形は連れていってないんだ。
「青い着物を着た..」って先生が言うから、マエノさんに「青い着物だって..」って言ったら、
マエノさんが「実はね、昨日青い着物を着せたんだよ」って言うんですよ。
「この少年の人形には力がないけどね、いずれこの少女人形に引っ張られて」って話をしたんですよ。
で、話を聞いて挨拶をして、早々に帰っちゃったんですよ。
2日経って、原宿に行く用事があったから御礼に行こうと思って、先生の事務所に行ったんだけど、事務所閉まってるんだ。
それからまた一週間位経って、近くまで行ったからまた御礼に行ったんだ。でも、事務所閉まってるんだ。

わたし知らなかったんですよ。後になって「微笑」っていう雑誌の記者をしていたエバラさんって友達なんだけど、彼が教えてくれたんだ。
その人形を視たその日に倒れて、3日後に病院で死んだそうですよ。久慈霊運さん。
あれやこれやで、これでもう4人死んじゃったんですよ。で、もうこれは一切こういう世界に活かしちゃいけないなって思ったんですよ。

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