8 生き人形~テレビ東京の取材~

ところがまたまた今のテレビ東京が
「この人形に纏わる話を聞いたんだけども、取材させてくれないですか?」
って言ってきたんですよ。
それもその話を持ってきたのは私の親しいディレクターなんですよ。
「前野さんどうする?」って聞いたらOKって言ったんで、取材を了承したんですね。

そしたら、そのディレクターが人形を作った人を探したんですよ。人形作家の小宮述志先生。
さすがテレビ局ですよね、小宮述志先生居場所がわかった。
その時なんとその小宮先生は、京都の山奥、比叡山の傍の山の中でもって仏像を作ってたっていうんですよ。
それでそこに取材に行くために、俳優の小松方正さん、あの方も色々怖い話をご存知だから、あの方が先に行く事になった。
後からスタッフ・クルーが追いつくはずだった。
落ち合うのはお互いが泊まるホテル。

それなのに会えない。

同じホテルに泊まるはずなのにスタッフに会えない。
仕方なく小松さんは帰ってきたってことですよ。
そんな馬鹿な話はないんですよ。あるわけがない。
でも彼は帰ってきた。

それで出直して、今度はスタッフだけで行った。
小松方正さんはナシで。
それで行ってインタビューをするわけだ。
ところがいざ行こうとすると新幹線の切符が全部バラバラだった。
慌てて全部切符合わせて、一緒にみんなで行ったんだ。
日帰りですよ。

ところがね、この時その担当のディレクター、私の友人でモメンさんって言うんですが、
奥さんが突然体の半分が真っ赤に腫れあがる病気になっちゃった。原因はわからない。
切符の手配なんかをしたスタッフ、これも交通事故。命には別状なかったんですけどね。
そして番組の構成をする作家がいるんですけど、この人ワンちゃん飼っているんだけど、
このワンちゃん足が効かなくなっちゃった。

さすがに向こうも嫌がったんだけど、もう少し取材をしたいということなので私も協力しましたよ。
私の国立の自宅も撮りにきましたよ。
その後今の東京タワーの下、今はテレビ東京のセンターになっていますがね。当時はあそこが局だった。
一番上の五階のBリハ、そこで撮るわけだ。
Bリハって言っても映像も撮れるんですよ。厚い扉があってね。
それで本番中の明かりをつけて椅子に座った。
それでカメラが回った。

このカメラを回している人っていうのは、金ちゃんという私の親しいカメラマン。
その前田金ちゃんがカメラを回しているわけだ。

「これ実は私、人形と舞台を共演することになったんですが・・・」
と始めた瞬間に

「あ、ごめんカメラ止まっちゃった!」

って言うんですよ。
そしてカメラは直らない。
それで別のカメラを持ってきたけど、また止まった。

なんやかんやでようやくカメラが回って、

「実は人形と舞台を共にすることになりまして・・・」

「あ、ごめん止まっちゃった」

カメラがまた原因不明で止まっちゃったんですよ。
それでカメラが動かないから別のカメラを借りてきた。
古いタイプのね。
ワイヤーで回すような。
それでまた

「実はこれ、私の経験なんですが、不思議な事はあるもんですね、実は人形と・・・」

って話し始めたら、そこのBリハのドアが本番の明かりが付いているのに

ドンドンドンドンドンドン!

ドンドンドンドンドンドン!

と叩かれる音がする。
五階ですよ、?一般の人はいないんだ。
しかも本番の灯りが付いている。そこを叩くバカはいない。

それが、
ドンドンドンドンドンドン!
ずーっと誰かが叩いている。

カメラは回っているから私ずっと喋ってましたよ。
だけどその音は止まらない。
そしたら、ディレクターのモメンさんがどうしようって顔をして、みんなを見た。
みんな行ったほうがいいって顔をした。
彼は真っ青な顔をしながらドアまで行きましたよ。
そのうちカメラも止まったから私も喋るのをやめた。
その間もドアは叩かれている。

それで、そのモメンさんがこっちを見て、開けてもいいかな?って顔をしたんだ。
みんなが頷いた。
まだドアは叩かれている。
彼がドアを開けた。

でも、ドアの外には誰もいない。

そこの五階っていうのはね、エレベーターがあって、階段が一本あるだけなんだ。
エレベーターを降りて突き当りがAリハ。左横がBリハ。
逃げる場所が無いんだ。
開けた瞬間に走っていく人間を見つけるくらい簡単なことなんだ。
でも誰もいない。

それでその日とうとう
「もうこれ以上やっても仕方ないからやめません?か」って話になって撮影は中止になった。

それでものの2、3日したらですね、東京中日カメラの方から電話があって、
「本物だからやめさせてください」って言うんですよ。
二週間かけたんですよ。
あの局が。あの局がですよ?二週間かけたんですよ。

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