6 生き人形~おかしな舞台~

それでいよいよ舞台が始まることとなった。
小劇場ドラマ館というところです。
本番当日に入っていって驚いたんだけども、やたらスタッフが怪我をしている。
照明さん美術さん、録音部の方、みんなガラス刺しちゃったとか、木を落っことしちゃったとか、指を切っちゃったとか、
みんな誰もかれもが怪我をしているんだ。
それも右手か右足なんです。
そんなことがあるから、やけに気にはなったんですよ。

それでも通し稽古をやって、いよいよ本番。
まずは昼の部ですよね。
昼夜二回あるから。

ところが全員動かない。
なんだか体がうまい具合に動かないんだ。
結果的にはお祓いをしてもらうことになり、昼の部は中止になりました。
それで夜の部だけとなったんですよ。

それで夜の部が始まった。
始まってみたら、客のほとんどがなんだか寒いって言うんですよ。
舞台には結構な人数が居るわけだから、会場は暑いはずですよね?
季節も季節で暑い時期でしたし。


舞台は進み、私の出番が来た。人形と絡んだんですよ。

その瞬間に、
『パン!パン!』
という音がして、人形の足と手が割れたんですよ。
何にもしていないのに割れたんですよ。

それから、後の方のシーンで、芸人二人が棺のような箱に人形を入れて運ぶシーンがあるんですよ。
目方で大体箱が8キロあるんだ。
結構重いんですが、でも8キロといっても大の大人が二人で担げないわけがない。楽なもんなんですよ。
ところが持ち上げたら重い。

二人共「嘘だ..」と思ったらしい。
二人で一生懸命持ち上げたら、底が抜けた。
それで人形が落ちてバラバラになった。

舞台から裾に帰ってきて、二人がおかしいって言うんですよ。
私はニックネームが座長と言われていたんですけど
「座長!おかしいですよ。人形がやたら重いんですよね」
って言うんですよ。

更にみんなが「舞台でドライアイスを炊いたか?」と言うんですよ。
舞台になんだか霧がかっている。
でもドライアイスなんて炊いたヤツはいないんだ。

他にも人形が泣いているとか、おしっこをしているとか、舞台を見ている人が色々言うんですよ。
でもそんな仕掛けなんて無い。

それで最後に杉山佳寿子さん、美人さんの声優さん。
彼女がおばあちゃんのカツラを被って、くるんと可愛く一回転するところがあるんですよ。
蝋燭をつけてね。
もちろん何回もリハーサルはしているし、危険なんてないんですよ。
でもそのろうそくが一斉にブワッと燃えたんです。
大騒ぎでしたよ。
そんなことがあったもんだからすっかりみんな嫌な気持ちになっちゃって。
早く辞めたいとみんな思っていたんですね。

ところが不思議な事になったんですよ。
そこの劇場の劇団が居るんですが、地方に公演に行ってた。
ちょうど我々の講演が終わると同時にその劇団が帰ってくる予定だったの。
そしてその劇団の講演が始まるはずだったの。
でも何か向こうでトラブルがあって、この劇場の講演が遅れちゃったんですよ。

そしたら劇場側が
「この舞台は非常に評判がいいし、テレビでも紹介されているし、このまま何日間か続けませんか?」
と言ってきたんですよ。
普通そんな事は珍しいですよね、「講演を続けてください」なんていうのは。
我々は嫌だった。

前野さんだけは「いや、絶対にやろうよやろうよ」と言ってたんですが、
前野さんが帰ったその当日、お父さんが病院で亡くなっちゃいました。
なんだかそういう風な嫌なことがずっと続いているんですよね。

そうしたらどこで聞いたのか、色々なテレビ局が
「どうやら後ろで聞くと色々怖い話もあるようだから、
神秘とかそのような形で撮るから、取材させてくれないか?」って言うんですよ。
でもそれはちょっと待ってって、私遠慮させてもらったんですよ。

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