4 生き人形~前野さんの誘い~

そしたら電話が鳴ったんですよ。
電話に出ましたら、人形使いの名人で演出家でもある前野博さん。
歳は私よりもずっと上なんですが、私の友達なんです。

前野さんからの電話で、
「あ、稲川ちゃん?今度人形と舞台をやるんだけども、稲川ちゃん座長で出てくれない?」
って言うんです。

彼の人形っていうのは、感性があって素晴らしく素敵なんですよ。評判もいい。
人形との舞台、面白そうだから一つ返事で「やらせて」って言った。
それで、私のほうも、私の後輩や役者なんかを紹介してあげたんです。

それからしばらくして、顔合わせをしたんですよ。
幡ヶ谷ってあるでしょ。その幡ヶ谷のスタジオで顔合わせですよ。

わたしが紹介した後輩は当時太田プロの芸人。
私のところのマネージャーも来た。
それから売れっ子声優で、美人さんの杉山佳寿子さん。
その他色んな方がいらっしゃった。

そしたら、そこで前野さんが
「まだ出来ていなんですけど、一緒に舞台に出るのはこういう人形なんです。」
と言って、人形の等身大のスケッチを見せてくれた。
オカッパ頭で目は切れ長、色が白い綺麗なお人形さんでしたよ。着物を着ていてね。

でも、その時私(ウッ..)と思った。
だってそれ、この間私が中央高速で見た少女と同じ顔をしているんですよ。
(なんで..?)と思った。

だけど、そんなの余計なお世話だから私言わなかった。

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