おやじの霊
北海道のテレビ局のディレクターなんですがね この人は本当に体が大きい逞しい人なんですよ。 でもすごく性格が優しくて、私は好きなんですよね。 それでその方がね、「稲川さん、おれオヤジの霊から遺産もらっちゃった」って言うんですよ。 「信じるけどどういうこと?」って聞いたんです。 この方のお父さん具合が悪くなったんですが、しょっちゅうは病院に顔を出せないんですよね。 まぁテレビ局の仕事で忙しいですから、それは無理も無いんですが。それで気の毒にお父さん、とうとう亡くなられたんですよね。 まぁもちろん息子ですからお通夜に行ったんですよね。 それでその日はお父さんの家で泊まることになったて、部屋でお兄さんと二人で並んでいたわけですよね。 この兄という人は実は先妻の息子さんなんですよ。 で彼はっていうと後妻の方の息子なんですよね。 ですから、お父さんは同じなんですけども異母兄弟なんですよ。 でも結構仲いいんですよね。 夜眠ってましたら、ふっとお父さんの匂いがしたっていうんですよ。 目があいたら、お父さんが座敷にいるっていうんですよ。 「ああ、おやじ」っていったら、「おお!」ってお父さんが言ったっていうんですよね。 目の前にいるのは、お父さんが死んでいるわけですから幽霊に違いないんですが、 不思議と怖くはなかったっていうんですよ。 それで「おやじどうする?一杯飲むか?」って言ったら、 「」ああ、って言ってお父さんが座ったんで、自分も向かい合って座った。 それでちょうどそこに酒があったもんだから、 湯のみに酒をついで、おお、やんなよってお父さんに湯のみを渡したんですね。 で、あれこれ喋ってたら、お兄さんが起きてきた。 おまえなにやってるんだよこんな夜中に..独り言なんか言って..。 「おお、今ねおやじが来ているんだよ。」って答えたら、 「馬鹿なことを言うんじゃないよ」って言って、お兄さんはまた寝てしまった。 それでまたお父さんといたら、お父さんがね、 「いや、気になってきたんだけど。おまえもわかっているとおりうちは事情があるからさ。 お前に言ってなかったんだけど、実はお前に渡す財産だけど、これこれこういう友人と、これこれこういう友人がいて、 その事を頼んであるから!彼らがお前の為の財産を管理しているよ。」ってお父さんが言うんですよ。 「おやじ悪いなあ。なんだ死んでも俺の事を気つかってくれるのか..」 彼は、自分の事を思ってくれているんだなあってすごく嬉しかったそうなんですよ。 それで飲んでるうちに、お父さんが、「じゃあ帰るわ」っていうんで、 「じゃあまた一杯やろうな」って話してお父さんは消えたっていうんですよ。 朝になってお兄さんにね、「いやあ、昨日実はおやじが来たんで、一緒に酒を飲んだんだ」って言ったら、 「おまえくだらない事いってんなあ。馬鹿な事言ってるんじゃないよ」って。 そういう事を言って全然お兄さんは相手にしてくれなかった。 葬式もみんな済んで日がたって、ふっとお父さんとの会話を思い出したわけですよ。 ところが、不思議とお父さんが言ってたその言葉は全部覚えてたっていうんですよ。 お父さんが言った友人の名前も、その財産の事も。 それで調べてみようかなって調べたら、簡単に友人の所在もわかった。 それで、そのお父さんの友人を訪ねてみたっていうんですよ。 そしたらその人が、 「いずれあなたのところへ、わたしから行こうと思ってたんだけど..。でもこれ、わたしとお父さんだけの内緒ごとだけど..あんた誰に聞いたんだい?」 って言うんだそうですよ。 実はこういう理由でおやじに聞いたって言うと、 「そんな不思議な事もあるんかね?」って言われたんで、 「実はこういう人も..」って言うと、 「ああ、その人の事も知ってるよ」って言う。 それで、もう一人の友人の所在も教えてもらって、その人の家にもいってみた。 実はこれこれこういうわけでっていったら、その人も驚いて、 「それ本当かい?驚いたなあ..そういう事もあるんだね..」って。 その人もお父さんから頼まれて、ちゃんと彼の財産を管理していたって言うんですよね。 不思議ですよね。みなさん。 「おやじが訪ねてきて言った事は本当だったんだよね。俺、本当におやじの霊から財産もらったんだよ。本当だよ?」 ってそんな話しをわたしにしてくれたんですよ。





