弟の体験
これは私の弟の話なんですがね、弟は若い時に漁場の調査と開発をしていたんですね。 それで世界中の海を回っていたんですが、その時はニューギニアの沖で漁場の調査と開発をしていたんです。 その時はたまたま時間と暇ができて部屋に居ましたら、乗組員の一人が来ていて、 「キャプテン、今ちらっと見かけたんだけども、じいさんがトイレの中で血を吐いていたんだよ。 あれはもしかしたら伝染病かもしれないし、もしそうだったら大変だし、 あの状況からするとあまりいい状態じゃないから、じいさん危ないんじゃないかな?ちょっと来てくれませんか?」 と乗組員がいうんで、弟はその乗組員に着いていったというんですね。 と行ってみると、トイレの戸が閉まっている。 弟が外から「大丈夫か?大丈夫か?」と声をかけると、 中から水が流れる音がして、「あぁ大丈夫よ、心配ないよ」と言いながら扉が開いた。 「その血はどうしたんだ?」って聞いたら、「いや大丈夫よ何も無いよ心配ないよ」と返してくる。 でもどうやらこれは具合が悪そうなので、いけないなーと思ってね。 「よし、船が港についたら一緒に病院に行こう」と言ったら、 「いやキャプテン大丈夫だよ、大丈夫。平気だよ」と言った。 この爺さんというのはこの船のコックさんなんですよ。 現地の人間なんですよね。 でも何故か弟はこの爺さんのことが好きだったし、この人は弟を慕っていたそうなんですよね。 何となく二人の間では情が通っていたそうですよ。 弟はその爺さんのことが本当に心配だったんで、船が港についた時に嫌がる爺さんを連れて病院に行った。 そうすると医者が、 「よくもまぁこんなになるまでほっといたもんだ。 今死んでてもこの人はおかしくないよ、仕事なんてもっての外だ」っていうんです。 状況としてはとても危ないよって言うんで、弟はお金も出すから、頼むからこの爺さんを助けてやってくれないかとお願いをして帰ろうとすると、 爺さんが 「キャプテン、船乗っけてよ、俺は大丈夫だから。キャプテンお願いだから俺を傍においてよ。」 あまりに何度もも頼むから、弟は、 「わかったよ、治ったら絶対にまた呼んでやるから。また船に乗れるから早く病気を治せよ」と言って船に帰っていった。 そしてまたニューギニアの沖に行ったわけですよね。 その時の海はとても綺麗で穏やかで、まるで鏡のようだったって言うんですよね。 弟に聴くとそういうことはたまにしかないそうですが、風も何もない。 辺りは心地よいブルーの海ですよ。 仕事も一段落ついてますから、弟は自分の部屋で休んでいた。 その時にうつらうつらと居眠りを始めた。 と、「キャプテン!キャプテン!」と声がするんでひょいっと見ると、 入り口にあの小さい爺さんが立ってて、「キャプテンご飯できたよ!キャプテン」と言うから、 「あーありがとう。」と応えるとその爺さんはパタパタパタっとキッチンにかけていった。 でもその瞬間、あれ寄せよ、爺さんは船に乗っているわけないんだから・・・と弟は思った。 びっくりして弟は爺さんがかけていった方を見るとなんの姿も無い。 急いで無線室に行って無線で連絡を取った。 そうすると病院から、「誠に残念ですが、あの方はたった今亡くなりました。」という連絡が返ってきた。 お爺さんは弟に挨拶に来たんですね。 そんな話を弟から聞かされましたね。





