気のせいか?

マスコミに勤めている、若い女性なんですけどね
とてもおおらかな人で、彼女の実家は大きなお寺さんなんですよね。
それでご実家のほうで行事がありますと、帰っちゃうんですよ、仕事を休んで。
それで実家の方の手伝いをしちゃうという人で、
その人のお話なんですけど。

やはり実家のほうで大きな行事があるということで、
仕事を休んで帰っちゃったんですね。
実家にはスタッフもたくさんいるんですが、まずは墓掃除から始まったって言うんですよね。
それで時間はどんどんどんどん押しているんですけど、なにせ広い敷地のことですからね、なかなか終わらない。
もうだいぶ暗くなってきた所でお兄さんが、家の方も忙しいだろうからお前は先に家の方に行って
ソッチの方の手伝いをしてくれ。ここは他の人に手伝ってもらうから。
だから家の方に行ってくれよって言うんで、はいと言って家の方に1人で向かったんです。
でもお家といってもお寺さんですからね、距離も相当あるんですよ。
墓地から家までっていうのは細い石畳の道を歩いて行くんですけども、周囲は鬱蒼たる木々なんですよね。
あまり昼間でも歩くのは嬉しくない場所なんですけども、慣れてますからね、自分の実家ですから。
その墓地から出る時の木戸をかちっと開けてね、それでカチャッとドアを閉めて錠を下ろした。
それでその細い道を歩いて行ったんです。
すると後ろでギー・・・カタンと音がしたんで、あら?と思った。
お兄さん後から来たのかしら?と思って後ろを振り返ってみた。
辺りもだいぶ暗いんですよ。
でも人影がないんで、変だなと思った。
風なんかで開く戸じゃないんですよね。
今自分は錠を下ろしていますから。
おかしいと思いながらも家に向かって歩いて行った。
でもなんだか知らないけど、自分の後ろに気配がある。
別に何があるというわけでもないんだけど、なんだか妙に後ろに誰かが居るような気がして
気になって後ろを見るんだけど、やっぱり誰もいない。
気持ちが悪いなと思いながらも歩いて行ったんですけど、途中で横から木の枝が出ていたんですね。
そしてその木の枝をくっとどかして、そしてまた歩きはじめた。
すると後ろで、ガサッと音がした。
しばらくするとまた後ろでガサッと音がする。
やだ・・・やっぱり誰か来ているんだと思ってまた後ろを振り返ったんですが、だーれもいない。
音はないんだけども確実に誰かが着いてきている、そんな気配がする。
嫌だなぁと思って急ぐんだけども、自分が急ぐと相手も急ぐような気がする。
それも何だかだんだんだんだん距離が縮まっているような気がして、うわっ気持ち悪いと思って立ち止まると
向こうも立ち止まるって言うんです。
でもそれは音がしているわけじゃないんだ、気配なんですけどね。
やだなって思ってもう一回振り返るんですけど誰もいない。
そんな風に思いながらまた歩いて行った。
すると向こうも同じようなテンポで歩いてきているのがわかるって言うんですよ。
もう家はすぐそこなんで急ごうと思って、少し早足で家に向かうと
向こうも急ぐような気がする。
でも振り返ると誰もいない。
やだなやだな・・・あ、もう少しで玄関だ。って思ったんで
玄関について後ろを向いて何も無いんで、あーやっぱり気のせいか・・・彼女がそういうふうに思っていたら
すぐ後ろで、「気のせいか?」って声がしたって言うんですよね。

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