別荘の隣人

不動産会社をやっている知人から聞いた話なんですがね。

一時期、「永住型別荘」っていうのが流行ったんですよね。
若いうちは別荘として使う。現役を引退したら永住するっていう、そういうものなんですが。

仮にAさん夫妻としましょうか。
その夫婦も五年前にここに別荘を作ったわけだ。
それで、周辺の別荘というのも、全て同じ頃建ったものなんですよね。

それで、その買いたての頃に、隣の別荘のご主人ともお会いして挨拶をしたんです。
その隣の方は独り者らしい、年配の男性なんですよ。
けれど、それ以来その隣の別荘のご主人とは出会うことはなかった。

最も会うことはないって言ったって、自分たちだってせいぜい1年に2~3回程しか来ないですからね。
そう、うまい具合に会う事はないんですよね。

会わなくても不思議はないんですが、別荘に来る度に気になる事がある。
それは、隣の別荘の庭が、枯れ放題なんですよね。
雑草が生え放題で、木も枯れている。明らかに人の手が入ってないんですよ。

どう考えても誰も来ていない。
「どうしたんだろうねぇ、隣の旦那さん、来ないのかしら?」
なんてことを夫婦で話しをしてたんです。

そんなある時なんですが、Aさんの奥さんが、
「あなた、お隣のご主人ね、来てるみたいよ」って言ったんですよ。
「あ、そう。珍しいねえ。」
「うん、今しがたね、2階の窓から外を眺めているご主人の姿を、私見かけたわ」
そんな話しになったんですが、挨拶もしないまま、その時は別荘から帰ったんですね。

それから半年経って、隣の別荘の2階から男性の死体があがったんですよね。
死後数年ということなんですがね…その男性というのは隣の別荘のご主人だったんです。

なんのことはないんですよね。
隣の別荘のご主人、その別荘にずーっと居たんですよね。

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