幽体離脱

この話はある女性から寄せられた、その方の体験談です。
彼女はどういうわけか、高校時代からアンティークに興味を持ち始めたんですね。
そういったって高校生ですから、お金は無いわけですから、小物から集めていくことから始めたんですがね。
そして大学に入る頃になると段々とお金が入ってきたんで、少しずつ高めのものを買うようになってきた。
ランプや鏡といったそういったものなんですがね。

それでこの方はこの頃は一人暮らしをしていたんですが、部屋のデザインなんかがようやく出来上がってきた頃に、
何だか妙な感じをするようになった。
それはいつも誰かに自分がじっと見られているような、そんな感じなんです。
ある日気がついたんですが、それは自分が部屋にいる時にそんな気がする。
誰かがじっと自分を見ている。

そんなことが続いてそれからしばらくすると、自分がゴロンと床に横になっている。
と、ある状況が頭に浮かぶんですけど、それは自分がゴロンと床に横になっている後ろ姿がハッキリ見える。
自分が机に向かっていると、その後姿が見える。
まるで幽体離脱をしているように、もう一人の自分が自分を見ているような感じなんです。

これは一体何なんだろう、そしていつも誰かに見られているような気がする。
この気配は日を追って段々と強くなっていく。
彼女は段々と怖くなってきた。

(一体誰なんだろう、私を見ているのは。
 絶対に誰かが私を見ているに違いない。
 自分は誰かに見られている)

そんなある時なんですが、机に向かって勉強をしていたんですが、
ウツラウツラとし始めた。
と、例によって頭の中にもやっとその時の自分の後ろ姿が浮かんできた。
そう、それは間違いなく自分が今している格好を後ろから見た状況なんです。
何だとても気持ちが悪い。

(やだな、気持ちが悪い。なんだろう)

そう思って辺りを見渡すと、窓が少しだけ開いていて外は暗闇になっている。
カーテンが開いているんですよ。

部屋の中が明るいですから、これだと中が見えてしまうと思い、何気なく立ち上がった。
そしてカーテンを閉めようと窓までトットットと近づいていくと、外は暗闇ですからそこに室内がふわっと写り込んでいる。
さぁ閉めなくちゃと思った瞬間、フッと思った。
自分が今窓を見てカーテンを閉めようとした時に、室内にある鏡が見えた。
その鏡に自分がチラッと映っているのがわかったんだけど、おかしい。
というのは、鏡に映っている自分はこっちを見ているんですよ。
鏡は自分の後ろにあるはずだから、後ろ姿を映していないといけないのに、正面を向いている。

(嫌だ、嘘だ)

恐る恐る体はそのままの体制のまま、ゆっくりと顔を後ろに向けていった。
それで部屋の隅にある鏡を見た瞬間、鏡の中から自分がこっちを見ている。
勿論自分も鏡の方を見ているんですが、それがおかしい。

何がおかしいかというと、顔をこちらに向けているのに、体は背中を向けているんです。
でも鏡の中の自分は体の向きも正面を向いたままこちらを見ていたそうです。
自分を見ていたのは、鏡の中の自分だったっていうんですよね・・・。

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