手のトンネル
これは山梨の方の話なんですけど、富士山がよく見えるところにトンネルがあるんですよ。 このトンネルは行ってみたら分かりますけど、おかしいことにそんなに古くないトンネルなんですが、板が張っていて入れなくなっているんです。 それですぐ並びにまたトンネルが掘ってあって、道路はそちらに繋がっているんです。 トンネルって一個作るのも結構な値段がかかりますよね。 一個作ったら十分に使えるわけだ。 なのに一個掘ってあるのに、その並びにもう一個を急に作るなんて、ありえないでしょ。 その先でがけ崩れが起こったとか、道が無くなっちゃったとかなら分かるんですけどね。 そうじゃないのにそのトンネルは使用不能になっているんです。 誰が行ったって不思議だって思うはずですよ。 私もそこへ行って不思議だなと思った。 そんな時にたまたま聞いた話なんですけど、こういうのはここだけじゃないって話だったんです。 というのはそこのトンネルを掘った時にたまたまあるものと会っちゃったらしいんですね。 あるものというのは昔の旧陸軍が色々なところに防空壕や火薬庫を作っていたそうなんですが、そういうものにぶち当たってしまったって話なんです。 ところが地元の人が出来上がった時に見た時には、きちんと使えるようなトンネルだったって言うんですよ。 じゃあ何でこんなにお金をかけて作ったトンネルを使わなくなったの?と聞くと、 「稲川さん、今は使っていなから分からないけども、当時からあのトンネルは手が出るって言われていたんです。 どういうことかというと、車でトンネルの中に入りますよね。 別になんてことはないんですが、走っていて音がするから見てみると、横のウィンドウの方に手がたくさん出てきて叩いてるって言うんです。 それで今のは一体何なんだとなるそうなんですよ。 それからトンネル内は土地の人が歩いたりしますよね。 突然足を引っ張られて転んだりするそうですよ。 痛いなと思って見たりするんですが、そこには石も何も無いんです。 それでよくよく見てみると、地べたから出た手が自分の足を掴んでいたって言うんです。 そういう風にして、手が出る、手が出るって話がどんどん広まっていったんです。 実際掴まれたっていう人も出てきた。 でもそんなことを今の時代に言ったって誰も信じませんよね。 トンネルの壁や地べたから手が出たって誰も信じるわけ無いですよ。 でもそれが実際に起こったから使わなくしたわけですよ」 それで、たまたまその話をしてくれた人っていうのがいたんです。 それはその辺りによく写真を撮りに来ているグループなんだけども、自転車でサイクルに来たそうです。 初めは皆で走ってたんだけども、一人が遅れたもんだから、よく知っている道だし、そのトンネルを突っ切っていこうと思ったんです。 それで出来てすぐのトンネルに入ったんです。 途中まで来たら何かにぶつかったような感覚があって、自転車から転がり落ちてしまった。 それで足は痛いし自転車の調子もなんだか悪いし、 (弱ったなぁ、まだトンネルは真ん中だしなぁ・・・。 参ったなぁ・・・) と、心細く思っていた。 そういう時に人間って嫌なことを考えるじゃないですか。 (あー、前に手が出るトンネルの話を聴いたなぁ。 まさかここがそうじゃないだろうな) と、頭によぎった。 普通は万が一だって手がトンネルから出るなんてありえないというか、考えないんですよ。 だから彼は本当に手が出るとは思っていないんだけども、心細いからそういう話を思い出しちゃってるだけなんだ。 それでここじゃなければいいなぁと思ったわけだ。 でもしょうがないから自転車をガチャガチャと音を鳴らしながらまた進んでいった。 そうしたら後ろのほうから キリキリキリ・・・キリキリキリ・・・ という音がするそうです。 何か来たなと思ったけども、そんなに遅い時間じゃないし、 (どうせまた自分と同じようなサイクリングの人が来たんだろうな) と思っていた。 そう思いながら自分はまた自転車を引きづりながら歩いていく。 キリキリキリ・・・キリキリキリ・・・ だんだんとその音が気になってきた。 (何か来てるな・・・。 嫌だなぁ) そう思っていると後ろから突然 「どうしましたか?」 という声がした。 「いやぁ、自転車をね、乗っていたんですがさっき転んでしまって。 自転車が思うように動かないんですよ」 「あぁそうなんですか。 お手伝いしましょうか?」 それでそのおじさんは改めてよく見てみると、何処にでも居そうな普通のおじさんで 国民服みたいなのを着た、田舎によく居そうなおじさんなんですよ。 それが実用車に乗って来ている。 自転車の大きいようなやつね。 それで一緒に押してくれて、そのおじさんとずっと喋りながら歩いていったわけです。 「いやぁここは手が出るって聴いてたトンネルだから、一人で心細いしどうしようかなと思っていたところなんですよ」 「あぁそんな話ありますよね」 「だから来てくれて助かりましたよ。 本当にありがとうございます。 ここって本当にそういうの出るんですかねぇ?」 「いや、ここは出ませんよ」 「このへんには自転車屋さんとかありますかね?」 「あぁ少ししたらありますから、そこで直してもらうといいですよ」 それでだいぶ進むと、出入口が見えてきた。 トンネルの出口から明るい日差しが指している。 (あぁ良かった) そう思っていたら、自転車が重くて動かない。 その時に彼はフッと気がついたんですよ。 さっきからおじさんと話していたのに、途中から自分一人しか喋ってなかったんですよ。 おじさんから返事が無かったんだ。 (あれ、嫌だな。いや待てよ) でも確かに左腕の方に、人が居る感覚があるんです。 (まさか・・・) そう思いながらそちらに手を伸ばすと、グッと手を抑えられた。 (おじさん居るよな・・・?) そちらを向くと、おじさんは居ないんです。 そこには誰も居ないんです。 ただ彼の肘のところに指が絡みついて、壁から手が出ていたそうです。 怪談話にしてしまうと簡単ですが、それなりの理由がきっとあるんでしょうね。 これなんですが、先程も言ったように、何故使用不能になったのかというのは、腕の話ももちろんあるんですが、 日本軍の火薬や何かを仕舞いこんでいたものにぶち当たったから使わなくなったというのがそこでは定説になっていますよね。 でも普通はトンネルを作るような時にそんなところをほじくり返していくかなと思うんですよね。 と、同時にもしかするとそこを掘り返してしまったからこそ、その国民服を着た霊はそこの番人だったのかもしれないですね・・・。 その人は地縛霊になってしまったのかもしれないですね。





