幽霊屋敷のハウススタジオ - 伊集院光
今度の話は自分の知り合いのディレクターに聴いた話です。 この業界にはハウススタジオというのがあります。 これは例えば病院ものの再現VTRを撮るのに映画とかと違って大きなセットを組むお金がないので、 元々病院だったけれど何らかの理由で廃業した建物を管理会社が買っていて、それを時間いくらという形で借りて撮影をするんです。 中には心霊番組や怪奇番組を撮るのに幽霊屋敷っぽい感じのハウススタジオもあるんです。 一番すごいのは、実際に殺人事件があった上に近所でもあそこは幽霊が出るよと評判のところを買ってそれをスタジオとして貸している、 ある意味本物の幽霊屋敷のハウススタジオがあるんですって。 そのディレクターは自称霊媒師を連れて、そういう幽霊が出ると言われている家のVTRを撮るのにそこの本物のスタジオを借りることになったんです。 けれどそこの幽霊屋敷の敷地内に離れがあって、そこに管理人の人が居るからその人に鍵を借りて、そして撮影をして鍵を返して 後で請求書が来るのでそれを振り込んでくださいと言われたので、それでそのスタジオにカメラクルーと霊能者のレポーターを連れてロケに行ったんです。 ただ、すげぇなって思うのは、幽霊が実際に出る、殺人事件があったっていう物件の同じ敷地内にずっと住むっていう仕事をする奴の神経はどんなもんだと。 普通に考えたら怖ぇじゃねぇかと。 そう思いながら指定の離れに鍵を借りに行ったらそこはカップルでやっているんですって。 男と女で住んでいて、その男はめちゃめちゃ明るい。 女は逆にめちゃめちゃ暗い。 それで来るなりその男の方は 「あ、この前ね、フジテレビの○○さんが来てね。 映画で使われたこともうちはあるんだよ」 みたいな感じなんですって。 で、一方の女の方はもう暗いというか自分たちが行くまで喧嘩でもしてたんじゃねぇかというくらい不機嫌で、お茶を出さないどころか頭の一つも下げない。 何ならスタッフのことをずっと睨んでいるような感じの女なんですって。 でもまぁその二人は関係ないから鍵だけ借りて現場の方に行ったら、現場の雰囲気が気持ち悪い。 カメラに映らない何かがある感じがするんですって。 入り口から気持ち悪いんだけども、入り口でオープニングを撮って、そして階段を上がって二階に行く。 その二階に上がる間も霊能者のレポーターが「ここはやばい」って言っている。 それで二階に行ったら、二階はマックスで怖いんですって。 何なんでしょうね、湿度が高いだけじゃなくて、圧迫感のようなものがすごくある。 明かりは殆どないんだけどもかろうじて見える壁がもうシミだらけになっていて、そのシミも人のような顔の形のように見える。 まぁ気持ちが悪い。 それで霊能者のレポーターもここぞとばかりにパニック状態で、 「ここにおじいさんの霊が! 怨念めいたもののをヒシヒシと感じます」 なんて言っている。 それでカメラマンさんが部屋の様子を撮っている。 そしたら突然後ろから 「あのさ!」 という声がして、見るとそれは先程の陽気な管理人の兄ちゃんなんです。 それで 「ここはもっと照明をこうしてさ。 この角度からさ・・・」 もう取材慣れしたラーメン屋の親父みたいな、内容に口出しを始めてしまって、鬱陶しいから勘弁して下さいよと。 「勘弁して下さい、我々はここを時間いくらで借りているんだから。 時間がかかったらその分予算も掛かっちゃうし、口出しはやめて離れで待っていてくださいよ」 そう言って管理人を追い返した。 それでその後も色々なものを撮って最後にレポーターのまとめも撮って、まぁ何事も無く撮影は終わったんです。 それで皆撤収。 ディレクターは鍵を返しに離れまで行く。 そしたら待っていた管理人のあんちゃんが堰を切ったように話すんですって。 「いやさ、最近のテレビはオリジナリティが無いね。 皆二階のあの部屋で同じような映像を撮っていくんだ。 それに大体俺に言わせればね、霊能者なんてのはインチキばっかりなんだよ。 ここにはおじいさんの霊がってさ、ここにはおじいさんなんて居ないっての。 ここでは女が死んだの。 それに女が死んでいたのはあの部屋じゃなくて、この離れなんだよ。 俺はさ、この離れに五年も一人暮らししているけどさ、幽霊なんか見たこと無いぜ」 じゃああの女は・・・。






