知られざる人々 - 村上ロック
これは去年の夏のことなんですが、ある日うちの店に来られた48歳の男性。 この方が「僕未だにどうやって処理をして良いのか分からないなということがある」と言って聞かせてくれたんです。 これはこの方が19歳のときの体験。 なのでもう30年近く前の話になるんですけども。 時代はって言うと1980年代。 この時代に日本の若者の間でバンドブームというのが巻き起こりまして、この方もパット見そうなのかなと思ったんですけども、今でもバンドをしている方なんです。 当時からギターに夢中になって本人がおっしゃっていましたけども素行もかなり悪いそうで。 学校になんかろくにいかずにギターを鳴らしているかバイクを乗り回しているか。 そんな青春時代だったそうです。 ただその男性、物心がついた頃から同い年の男の子の幼馴染がおりまして。 この幼馴染も当時バンドに夢中になっていたんですけども彼はこの男性と違って素行もとっても良くて勉強も出来て良い高校からそのまま有名な国立大学に入学した。 そんな幼馴染をこの方も大変自慢に思っていたそうです。 ところが19歳のある日、この幼馴染が自分が運転していた車で事故を起こしまして。 フロントガラスに頭を強打して痛ましい話なんですが、頭蓋骨が割れてしまって中から脳が飛び出した状態で即死だったそうです。 その知らせを聞いた時その男性は現実を受け止められなかったそうです。 そしてその感情が怒りに変わった。 「なんだよ、あいつ俺なんかより全然頭が良くて良い大学に入れてもらって。 何なんだよこの結末は、全然笑えないよ」 怒り狂ったというんです。 でも残酷なもので、時間が経つにつれてその感情も薄れていく。 幼馴染が逝って数ヶ月が経った頃、男性が組んでいたバンドがちょっとした事情で解散しまして。 でもバンドをまたやりたいと思ったので音楽雑誌を買ってきてその最後のページにはメンバー募集の広告が出ている。 見ていくと自分と同い年の女の子が「ボーカルをやってみたい」と書いているんです。 (あー、俺女の子とバンドやったこと無いな。 もし会ってみて可愛い子だったら付き合ったりできるんじゃないかな) そんな下心もあって女の子に連絡を取ってみましたら、彼女も非常に乗り気なんです。 「いいですね、私もやってみたいです。 今一度電話を切ってスケジュールを確認してまた連絡します」 この男性はワクワクしながら待っていたんですけども、いつまで経っても折り返しは来ないんです。 あぁ、また気が変わっちゃったのかな、そう思っていた日の真夜中、この男性の黒電話が鳴るんです。 出てみると昼間の女の子なんですけども、ものすごくテンションが低いんです。 「あのー、正直私あなたとお会いしたこともないですし、昼間少しお電話しただけなのにこんな話をすると冗談だとかイタズラだって思うかもしれないんですけど、今から私が話すことは本当のことなんです。 あの、あなたの周りで最近頭を強く打って亡くなられた方はいませんか?」 夜中に会ったこともない女の子から突然電話があって突然こんなことを言われるとまず思うのが(ちょっとやばい子なのかな?)ですよね。 あまり関わってはいけないと思って適当に話をはぐらかそうとするんですけど、 「いえ、そういうことじゃないんです。 私の話は本当のことなんです。 あの、あなたの周りで最近頭を強く打って亡くなられた方はいませんか?」 そこまで言われてようやく幼馴染のことを思い出す。 「あぁ、一人いるっちゃいるけど」 「そうですよね、その方あなたととっても仲の良かったお友達ですよね。 その人今私の部屋にいるんです」 「君何を言ってるの?」 「いや本当なんです。 実は私昔からこういうことがあって。 死んだ方の意識が私の中に入ってきてメッセージを伝えてほしい、そんなことがあるんです。 今日もあなたとの電話を切った後、その方の意識が私の中に入ってきて、その途端頭が割れそうに痛かったんです。 だから折返しが出来なかったんです。 それでその方があなたに伝えたいことがあるそうなのでどうか後日会っていただけませんか? 場所は池袋の中央公園、そこに昼間来てください」 まぁこんな電話にわかに信じることは出来ないんですけどもなんせ幼馴染のことを言われてますから騙されたつもりで池袋に行ったんです。 行ってみると遠目でも分かるちょっと派手な女の子で、声をかけた。 「あなたですか?」 「はい、今日は来てくださってありがとうございます。 この前お話したとおりあなたのお友達があなたに伝えたいことがあるそうです。 その方が亡くなった時あなたはとっても怒ったんじゃないですか? 怒りの感情を持ちませんでしたか? でもそうじゃないんだと。 『俺は突然死んでしまったけれど、お前が思っているような簡単な気持ちで死んだんじゃないんだ。 それだけは分かってくれ』 そう訴えているんです」 「あぁそうですか。 あいつがそう言っているんですか? あいつは今何処にいるんですか?」 「はい、今あなたの隣りにいます。 あなたに向かって一生懸命手を合わせています」 「あぁそうですか。 じゃああいつは今ここにいるんですね。 分かりました、私からもあいつに言いたいことがあります。 あいつに言ってやってください。 もう二度と出てくるな。 お前の気持ちはよく分かった。 でも手を合わせたいのは俺の方なんだから、もう何も心配しないで成仏してくれ。 そう伝えてください」 「はい、大丈夫です。 もし良ければ生前その方が好きだったものを供えてあげてください。 その方はこういったものが好きだったんじゃないですか?」 と言っていくつか挙げるんですけども、全てピンポイントで当たっているんです。 そこまで聞いた時に(あぁこの子が言っていることは本当なんだ。じゃあやっぱり俺の隣には奴がいるんだ) そう思うとフッとこみ上げてくるものがあるんです。 でここまでこの男性は私にその話をして、 「これ良い話ですよね?」 と私に聞くんです。 「えぇ僕も話を聴いていてグッと来ました」 そうなんですよ、ここまでは良い話なんです。 でも僕この後の展開でゾッとしたんです。 ここまでの流れがあって最後にこの女性が 「私に何か質問はありますか?」 と聞いてきたんで 「あなたは何故そのことが分かるんですか?」 と聞いたんです。 「はい、実は私のうち、代々そういう力があるんです」 「じゃあ君のお爺ちゃんもお婆ちゃんもそうなの?」 「はい、私の祖父も祖母も、更にその祖母も、ずっとそうなんです」 そう言ってその女性は自分の生い立ちを話し始めたんです。 で、ここからは信じられないような話なんですけども、この女性は群馬県の山間部にあるとある隔離された集落で生まれ育ったって言うんです。 この集落がいつ頃から隔離されていたのかはその女性もハッキリとは知らないそうなんですけども、知る限りでは江戸時代の頃には既に隔離されていたと言うんです。 じゃあ何故隔離されてきたのか。 ここからが問題なんですけども、この集落で生まれた人間というのはどういうわけか生まれながらに普通の人間には備わっていない能力が備わっているそうなんです。 例えば目の前の物を手を使わずに動かすことができる。 でもそんな力を持った人ばかりだと周りからすると脅威でしかないですよね。 いつの時代もそういう能力を政治利用する人がいた。 なので現代に至るまで生かさず殺さずで狭い集落に隔離してきたというんです。 「じゃああなたもそういう能力があるんですか?」 「私はもう今は無いんですけども、子供の頃は有ったんです。 私の場合は子供の頃、目の前の人の頭の上に風船のような球体が見えたんです。 私は子供心にそれがすごく面白くて。 心のなかで(割れろ)って念じたりしていたんです。 とそれがパチンと弾けて次の瞬間その人は膝から崩れ落ちて死ぬんです」 「え、じゃああなたはその能力を使ったことがあるんですか?」 「はい、私その能力で8人の人を殺したんです。 でもその能力が強すぎるというのが集落の村長に知られて、その人の屋敷の一部屋に一週間監禁されたんです。 そしてその間にその能力が無くなったんです。 でも残った僅かな力で死んだ人を見ることができるんです。 こんな話をするとぎょっとするかもしれないですけど、意外とみんなに当てはまるんですよ。 例えば初めて会ったのにすごく気が合うなって人いませんか?」 「います」 「それはあなたの後ろの人と相手の後ろの人が惹かれ合うからです。 じゃあ逆に初めて会ったのに気が合わないなぁって人いませんか?」 「います」 「それは後ろの人同士が反発するからです。 人間って大抵陰か陽の性質を持っています。 これが磁石のS極とN極のように陰と陽でしたら惹かれ合うんですけど、同じ性質だと反発し合うんです。 じゃあ最後にあなたの周りで誰からも好かれてる人はいませんか?」 「います」 「そういう人は一番危ないんです。 その人の後ろにいるものって死神なんです」 「えっ!?」 「その性質の人って陰の性質の人も陽の性質の人もどちらも殺すことができるんです」 30年近く前に初めて会った女性にそんな話を聴かされたんですけども、あのときの彼女の口ぶり、あの説得力。 とてもじゃないけど嘘とは思えなかった。 ここから少し余談になるんですけども、以前この話をあるお客様にしまして。 話が終わった途端、その方は携帯を取り出して“隔離された集落”って検索したんです。 と、これもちょっとびっくりしたんですけども、日本全国47都道府県中46都道府県に隔離された集落って存在するんです。 ただ一つだけ出てこない土地があるんです。 それは群馬県なんです。 こうなった時に逆に信憑性を増すと言いますか。 もしかしたら未だに誰にも知られてはいけない集落、そんな集落が群馬県に存在するのかもしれないな、そんなことを思ったお話だったんです。






