両親の趣味 - 響洋平(DJ)

私は普段はクラブでDJをしているんですけども、怪談話が大好きで色々なところで話をさせていただいております響洋平と申します。

この話は私の知人のDJで仮にKくんとさせていただきます。
そのKくんという男性が昔実際に経験したお話になります。

今からでいうと15年ほど前の話になるそうですが、当時Kくんは高校生で部活などもしながら慌ただしく高校生活を過ごしていたんです。

これはちょっと変わった話なんですけども、当時Kくんのご両親というのがめちゃくちゃ心霊スポットにハマっていたそうなんです。
それなので夫婦で夜は行かないんですけども昼間に色々な心霊スポットに行っていたそうなんです。
Kくんはそんな両親の趣味をおかしいと思いながらもあまり気にせずいたそうなんです。

ある時学校が終わって両親とご飯を食べに行くことになったんです。
車で両親が学校に迎えに来て、そのまま食事に行ったんです。
そして食事が終わってそのまま家に帰る車中でKくんは疲れもあってウトウトと眠ってしまったそうです。

次にKくんが目を覚ました時は山の中だったんです。
そこに車が止まっているんです。

「え、ここどこ?」と両親に聞くとちょっと笑いながら

「ここね、昼間にお父さんとお母さんが来た心霊スポットなの。
 お父さんとお母さんは昼間に行ったから、あんたちょっと行ってきなさいよ」
 
お母さんにそう言われてなんてことを言うんだとKくんは思ったそうなんですが、両親が面白そうなのでちょっとした肝試し感覚でKくんは車を降りて山の中に入っていったそうです。

車を降りてすぐのところは車のヘッドライトがあり明るかったんですが、道を曲がるともうヘッドライトの明かりもなくて真っ暗な森なんです。
Kくんは少し怖いと思いながらも当時のガラケーを取り出して足元を照らしながら進んでいったそうなんです。

両親が言うにはこの先にトンネルがあるそうなんですけども、流石にガラケーの明かりだけだと暗くてこれは嫌だなと思い始めたんです。
しばらく来たところでKくんは「ふざけんなよ、もう俺帰るよ!」と叫んで踵を返して車まで帰ったそうなんです。

車に戻って両親に「なんてところに連れてくんだよ」と文句を言って、両親も笑いながらそのまま家に帰ったそうなんです。

家に帰ってKくんが携帯を見ると、非通知の着信が三件入っていたそうです。
誰だろ?と思いながら留守電を再生したそうです。
ガイダンスが流れた後に草をかき分けて藪の中を歩く足音がずっと入っているんです。

サッ、サッ、サッ、サ

なんだコレ?と思いながらもずっと聴いていたんですが、特に声もなくずっとその足音が続いているんです。
Kくんはそのメッセージを切って、次のメッセージを聴くことにしたんです。

聴いてみると次のメッセージもまた足音なんです。
ただ少し歩幅が早いんです。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザ

だんだん怖くなってきながらもKくんは三件目のメッセージも聴いたそうです。

また同じ草の藪の中を歩く足音で

ザッザッザッザッザッザ

今度は走っている足音なんです。
怖がりながらもそのメッセージを聴いていると、ピタッとその足音が止まったんです。
止まってしばらくの沈黙の後、「ふざけんなよ、俺もう帰るよ!」という自分の声が聴こえたそうです。

Kくんは急いでそれを切って両親のところに行ってそれを聴かせたそうです。
母親はそれを聴いた途端に真っ青になってKくんをガラケーをバキッと割って次の日急いでお祓いに連れて行ったそうです。

両親はそれ以降心霊スポットに行くことは無くなったそうなんですけども、一体あれがなんなのか分からないと、そんな話をしてくれました。

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