新築の床下に- 大島てる

京都で殺人事件がありました。
犯人が逮捕されましたが、被害者の遺体がなかなか見つかりません。

しばらくして、犯人がようやく被害者の遺体を、
どこに遺棄したかの自白をはじめました。

その犯人は大工をしていて、あちこちで建築現場を請け負っていました。
その請け負っている中の一軒。
新築一軒家の床下に遺体を遺棄したと自白をしたのです。

その新築の家は、既に完成して引き渡し済みでした。
新しい家族が引っ越してきて、その家に幸せそうに暮らしていました。

警察としては、自白の信憑性を確認しなければいけないですから、
その家族にアポイントメントをとり、訪問をして、
「床下を調べさせてくれないか?掘らせてくれないか?」と頼んだわけです。

家族に了承をとり、床下を掘ってみると、
犯人の供述どおり、被害者の遺体がでてきました。

この家を買った家族は、もちろんローンも組んでいるわけです。
引っ越すのは自由ですが、売るとなるとこの家は事故物件となり、
正直に遺体が見つかったと告知する義務が課せられています。

当然犯人に責任をとるよう要求はできるわけですが、
犯人はもう刑務所にいてお金も稼いでいないわけですから、
結局はその家族がお金を損することになってしまいます。

事故物件なんか平気だ、幽霊なんか信じていないという人は大勢います。
この件でも、変な音が聞こえたといった怪現象が起こっていたわけではありません。
何も言われなければ、気づかず快適に住み続けていたかもしれません。

けれど、今や遺体が埋まっていたんだと知ってしまったわけです。
その事実を知ってしまった以上、気持ちが悪い引っ越したいと感じるのかもしれません。

しかもこの建物は事故物件ではないということで、
値引きもされず売り出されたわけですから、
いくら心霊現象を信じていない人でも、一切の値引き無しで、
定価で物件を買うということは、受け入れられないことなのではないでしょうか?

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