迎えに来た男の子

東京の小平の方に住んでいる方なんですが、それはもう霊感が強く、色々な体験をしているんです。
この方の若い時の、お話なんです。

この方は、社会人になって家を出て生活していたんですが、たまたま仕事の都合で、実家に戻ってきたんですよね。
実家に帰ってくるのはしばらくぶりですから、実家でのびのびと過ごしていたわけですよ。

朝、気持ちよくガラっと戸を開けてね、ふっと庭を眺める。
庭の向こうに垣根があるんですが、その垣根のあたりを、ぼーっと眺めていましたら、
「おーい」って声がするんです。

声のほうを見てみると、小学生がこっちを見て手を振っている。
それが自分の同級生なんで、「あぁー今行くよー!」って手を振り返したんです。

でも、手を振りながら(ん?)と、思った。
それでその男の子に、「お前、小学校の時に死んだんじゃなかったっけ?」って聞いたって言うんですよ。

(あれ?俺今何を見ていたんだろう?)
間違いなくそれは小学校の時の同級生で、小学校の時に亡くなっている、そいつなんですよ。

ゾクッとした。
でも、ばらくすると、そんなこと忘れてたんですよね。

しばらく日が経って、また朝にガラッと戸を開けて、あくびをしたり、伸びをしたりしていたんですよね。
そしたらまた「おーい」って声がするんです。

見ると、庭の中に小学生が立って手を振っている。
「あ、お前小学校の時に死んだ…」ってまた言いかけると、ふっとその子が消えたって言うんですよね。

やっぱり小学校の時に亡くなった友達なんですよ。
(アイツなんでこんなとこに?)
これはやっぱり夢でもなんでもないな。(あいつ来ているんだ…。嫌だな)っと思った。

そのうちにまた日も経ってきて、時間も経って、いつものように朝ガラッと戸を開ける。
さぁ出かけようかと思っていると「おーい」っと声がする。
縁側のすぐ下で小学生が笑っている。
「お前小学校の時に死んでるだろ?」って言うとまたスッと消えた。

初めは垣根の外、次は庭の中、次は縁側の縁。
だんだんだんだんだんだんと近づいてきているんですよ。

(まずいなこれは、これは何かあるのかな…。何でアイツが俺のところに今頃来るんだろう?)
おかしいなと思ったけどもしょうがない。どうしていいかわからないから。

でも日が経つとそんなことまた忘れちゃうんですよね。
またいつものように、がらっと戸を開けて、背伸びをして深呼吸をしていた。
すると、「おい」、と声がする。

(あ、あいつだ。)
おかしいな庭に居ない。
振り返ると座敷の中にちょこんと座って、ニッコリ笑っている。
部屋の中に入ってきてしまっている…

「お前小学校の時に死んでるだろ?」って言ったら、すっと消えた。

(とうとう家の中にきちゃったか…。アイツ一体なんなんだろう。これはもしかすると、俺危ないな。)
と彼は思った。

日が経った。でも彼は現れなかった。
(あーもう来ないもんだなぁ)と思うとすっかり安心して、もう全然そんなこと忘れていたんですよね。

それで朝、いつものように出勤して行って、西武新宿線のホームに立ったって言うんですよ。
結構人も混んできた。向こうから電車が来る。

黙って立っている瞬間に、グンッと押された。またグンッと押された。
危ない!と思っていると、またグンッと押された。
すごい勢いで押されるんですよ。

(あぶねーな!)って思って後ろを向いたら、小学生の彼が立っていて、
一生懸命、彼のことを押しながら、笑っているんです。

あいつオレのこと迎えに来たんですよね…って言ってましたね。
でもどうやら諦めたようなんで、彼は今無事に健康に暮らしていますがね。

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