白装束の霊

東京の世田谷に烏山という所がありましてね、ここには古くからの寺町があるんですよ。
そこにはお屋敷もあったりして、なんだかそこだけ京都を思わせるような、そんな感じなんですよね。

そんな由緒あるお寺の中の一つに、「夜中の2時15分になると、白い装束を着た女の幽霊が出る」というお寺があるんです。
これは本当にそうなんですよ。時間きっかりなんですよ。
それでね、話しによると、この女の霊っていうのは、その時間になるとトイレに行くんだそうですよ。

まだこの話しを知る前、私が若い頃の事なんですよ。
芸能界で私の師匠と言ってもいいのかな?大変お世話になった俳優さんがいらっしゃる。
その方が亡くなりまして、たくさんの方がお見えになるわけですよね。

その時に、私は案内役としてそこに居たわけだ。
それでお寺の大きな門をくぐった下の入口の所で、「あちらでございます。遠いところご苦労様です」ってやっているわけだ。

そうこうしているうちに、時間は夜中をまわっちゃった。
ところがね、こういう業界ですから、そんな時間にも人が来るんですよ。それは通夜の晩でしたからね。

あれこれしててね、もうだいぶ夜もふけてきた。
さすがにみんな疲れてる。みんな眠くなってきている。

そんな中で私、何気なくひょいっと見た。
建物があって庭がある。その向こうに長い廊下があるんですよ。
そこを白い着物を着た女性がスーっと歩いて行くもんだから、あれ?と思った。

だからね、「あれ道間違えてるんじゃないの?道教えてあげたら?」って言ったんです。
それで一人が、その女の人のほうへ行ったんですが、「女の人…消えちゃいました…」って言うんです。

それで、みんなで今の女の人はなんだったんだろうね?って話しになったんです。
白い衣装を着た女の人ですからね?

後になって、そのお寺には夜中の2時15分に、白い装束を着た女の人が出るって話しを聞いたんです。
私達がその女の人を見たのも、ちょうどその時間帯、そのお寺だったんですよね…

あるんですよね。
白い装束に速い足、こういう話しって、よくあるんですよね。

前の話へ

次の話へ