雨の日の宿直


雨の日に幽霊が出るっていう話しは、まんざら無視出来ないんですよ。
っていうのは、そういう話しをよく聞くんですよね。

例えば、リンが燃えるって話しよくありますよね?

それと、落雷ですよね。落雷があると、その地面の近くで発火現象ってのが起きるそうですよ。
それが地面が這っていって、窓から入るって話しはあるんですよ。本当に。

それを見た人が、「人魂を見た」なんて言う事はよくあるそうでね。
これは科学的に証明されているそうなんですがね。

地方での事なんですがね…小学校の手伝いをしている、おじいさんが、
夏休みに入ったって事で、学校の教室や庭を整理していたわけだ。

そうこうして夕方になった。
夕方になると、雨がザーっと降ってきた。
(あー降ってきちゃったな…)と思っているうちに、これが大雨になっちゃったんですね。

電車は止まっているし、あちこちの道路も雨に浸かっている。
帰るに帰れないんですよね。

それで、しょうがないから小学校に泊まる事にしたんですね。
今は使ってないんですが、宿直室があるんで、そこに泊めて貰おうと思った。
夏ですしね、布団がなくても横になれれば一日位大丈夫ですからね。

それで、宿直室へ行って、ゴロンと横になった。
雨がだんだんと強くなってきた。風も出てきた。
なんだか寂しい。それにどうも気持ちが悪い。

と、その雨音に混じって、ガタガタガタガタ音がしている。
風で窓が揺れているのかな、と思ったんですが、どうもそんな感じがしない。

ガタガタガタガタ…ガタガタガタガタ…
だんだんと、その音が気になってきた。

どこで鳴っているんだろう?と思ってね、廊下を出て、その音のほうへ歩いていった。
音が鳴っているのは、どうやら表戸のほうらしいんですよ。

ガタガタガタガタ…ガタガタガタガタ…
そこだけ音がしている。

で、表戸にあかりを向けると、戸の上のほうはガラスになっていますから、外が見えるわけだ。
雨が、闇の中をザーっと降っている。
そこに、長靴を履いた小学校一年生位の女の子が立っているわけだ。傘も持っていない。雨に濡れている。

夏休みの夜中に、なんでこんな小さな女の子が一人で居るんだろう?
そうは思ったけど、小さな子どもが雨に濡れていますからね。

「ちょっと待ちなさいよ!」そう言って表戸を開けて、「入りなさいよ」と声をかけた。
ところが、姿がない…途端にゾーっと寒気がした。

おかしい。考えればおかしい。こんな雨の中ですからね。
(嫌なものを見ちゃったな…)そう思って、また表戸を閉めて鍵をかけた。

(あれは何だったんだろう…)気にはなりますが、姿がないですからね。
宿直室に戻ろうと思って、また暗い廊下を歩いていった。

歩いて行くと、廊下の途中にある教室の扉が少し開いている。
閉めようと思ったんですが、気になって、教室の中をひょいっと覗いてみた。

教室の中にある机の一つ。
暗がりでよく見えないんですが、誰かがポツンと座っている。

「誰かいるのかい?」声をかけたけど、返事はない。
おかしいなと思って、懐中電灯の灯りをひょいっと、その影のほうに向けてみた。

途端に、「うぁああ…」声をあげた。
懐中電灯の灯りの中、机に向かって、さっき表戸のところで見た女の子が一人座っている。

その子が、クーっとこっちを向いた。
と、それはね、水膨れした目玉のない女の子だったそうですよ。

そのまんま、おじいさん気を失っちゃった。

話しでは、大雨の日に、この小学校二年生の女の子が、濁流の川を眺めていたそうなんですね。
それで、そのまま濁流に飲まれて亡くなった。
そして、しばらくしてから、水死体で見つかったって話しがあるそうですよね。

どうやら、大雨が降ると、この女の子が学校に来るようなんですよね。
こんな話しを聞かせてもらいました。

雨の日っていうのは、大人にとっては嬉しくない事であっても、子供にとってはなんだか嬉しいものであったりするんでしょうかね。
また、霊にとっても良い時間、良い場所、良い状況なのかもしれないですね。

雨の日のお話って多いですもんね…
雨の日に人魂が飛ぶって話し、よくあるじゃないですか?多分きっとそうなんですよね。


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