リアル超能力者の知り合い

775 :本当にあった怖い名無し:2008/02/26(火) 15:47:23 ID:/MUtnSZs0

リアル超能力者の知り合いがいる。
ぱっと見、普通の女だから、超能力者だとはとても思えない。

この板の住人からすれば「どんな能力なのか」に興味があるんだろうけど
俺としては、そいつが「どんなやつなのか」とか
「どんな苦労をしてるのか」を知ってほしい。
リアル超能力者がどれだけ辛い思いしてるかを知ってほしいのだ。

だから、そいつとの会話を重点において書いた。
もちろん会話の内容なんか全部覚えてないから
不足分は妄想で補ってる。
要するに、半分妄想だから、小説だとか作り話だとかいう批判も
それはそれで正しい。

最初にそいつが普通じゃないことに気付いたのは、
たしか幼稚園ぐらいの頃
そいつと俺は家が隣同士で、親も仲がいいんで、
小さい頃からよく遊んでた。

最初に気付いたのは幼稚園の頃
俺の弟と俺、そいつとそいつの妹の4人で
俺んちでかくれんぼして遊んでたんだ。
俺が鬼で探してるとき、そいつは押入れの中に隠れてた

「美佳見ーつけた」
押入れの引き戸を開けて俺は言った。
そのとき、そいつは二段になってる押入れの下の段に隠れてて
俺に見つかって、少し笑ったと思う。

見つけた直後、家の前を救急車が通ったから
俺は救急車の音源と思われる背面の方向を振り返って見ながら
「やべ。救急車だ。親指隠せ」と言って
すぐに正面に向き直ったと思う。
ところが、振り返ったらそいつが消えてた。

無意識に音源に目をやってしまったとき、そいつから目を離したんだが
目を離した時間は1秒程度だったと思う。
何があったのか理解できなくて
しばらくそいつのいた場所を眺めてたと思う。

俺はまだ押入れの引き戸を自分の肩幅ぐらいしか開けてなくて、
しかも俺が開けた押入れ引き戸の隙間の前に立ってたから
俺を押し退けないかぎりそいつは押入れから出られない。
そして、そいつは布団と押入れの壁の間に潜んでたんだが
布団と壁の間に、ついさっきまで子供が隠れていたことを示すかのように
不自然な隙間が空いてた。
扉を全部開けて押入れの中を見回してみたけど、
やっぱりそいつはいなかった。

何があったのかを理解できない俺は
延々と押入れの下の段を探した。
俺が押入れの中を探ってたら、俺のいた部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、さっき俺が押入れで見つけた美佳だった。

俺 「え??どうやって外出たの?」
美佳「う~ん。なんかよく分かんないけど
   いつの間にか庭にいた」

幼稚園の頃は、こういう美佳の瞬間移動がえらく頻繁だったと思う。
幼稚園の鳥小屋の前で鳥を一緒に見てたら
いつの間にか美佳だけ鳥小屋の中にいたりとか
みんなで空き地においてあった大きな石の上に乗って遊んでたら
一緒にいなかったはずの美佳が突然目の前に現れたりとか。

空き地の石の近くに美佳が現れとき、俺は美佳が現れる瞬間を見た
煙がボワーンと出て登場とか、ゆっくり姿を現していくとかじゃなくて
動画のコマ送りみたいに、音もなくスッといきなりその場に現れた。

幼稚園卒業する頃にはもう慣れてきて
俺 「おお、またかよ」
美佳「あはは。まただよ」
みたいな感じになってたと思う。

美佳は、お母さんから瞬間移動することは人に言っちゃダメだって
言われたらしくて
少なくとも小学校に上がる頃には
瞬間移動後、周囲にどうやって現れたのか聞かれても
「え?さっきからここにいたよ。気付かなかった?」
みたいな感じで、誤魔化すようになってたと思う。
ただ、俺に対しては、別に誤魔化したりはしてなかった。

幼稚園の頃から、美佳のことを気味悪がるやつもいた。
「あいつとは仲良くしない方がいいぜ。
一緒にいるとよくないことが起こるんだってよ。
うちのお母さんがそう言ってたよ」
という俺の友達の言葉をまだ覚えてる。
ショックだった。

おかげで美佳は、幼稚園でも一人砂遊びしてたりすることも多かった。
一人遊びする美佳を見ると、なんか無性にかわいそうに思えて
そういうときには、俺は美佳に話しかけたりした。

よく美佳のおままごとなんかにも付き合った。
おままごとは結構な回数こなしたけど
いったい何が楽しいのかは、結局今になっても分からない。

消防のころになると美佳の瞬間移動はだいぶ少なくなったみたいで
小三か小四のころに
「最近、瞬間移動してるか?」
て聞いたら
「ここ半年ぐらいはないよ」
と答えてた。

ただ、一度立った悪い噂話はなかなか消えてくれなくて
それで、美佳は小学校でもやっぱり浮きがちだった。

美佳と同じクラスだったときは、一人机に座ってる美佳を見ると、
よく俺の方から話しかけた。

消防の頃から体も大きくて、運動神経もよかった俺は
小学校の頃は、クラスの権力者だった。
俺や美佳を冷やかすやつは実力行使で黙らせたし
美佳へのいじめが酷いなら、代わりに俺が制裁を加えてた。
そんなことを繰り返してたら、
表立って美佳をいじめるやつもいなくなった。
そんな俺に美佳も恩義を感じたらしく、
バレンタインなんかには自宅にチョコレート持って来てくれたりした。
まあ、俺の分と一緒に弟の分も持ってきてたから
深い意味なんてないのかもしれないけど。

だけど、美佳と本当に仲良くしてくれる人もなかなか現れなかった。
せいぜい、学級委員でもやってそうな人望ある女が
お情け程度に会話の相手してくれる程度。

そうは言っても、小学校になると俺にも友達がたくさん出来て
サッカーなんかにも夢中になったんで
美佳といる時間は自然に減っていった。
小学校高学年にもなると、美佳は次第に本をよく読む子になってた。

小学校に入ってから、俺が美佳の瞬間移動に遭遇したのは
放課後、校庭に誰もいなくなったときだ。

放課後、みんなとサッカーし終えた後
俺は一人、校舎の壁に向かってボールを蹴ってた。
跳ね返って来たボールをもう一度ボレーで壁に向かって蹴ったら上手くできなくて
「よし、○○回続けてボレー成功させるまでは家に帰らない」
みたいなルールを一人で設定しちゃって、
ランドセルを置いて真剣に一人遊びしてしまったんだと思う。
そうやってよく、自分に試練を課して遊ぶお子様だったから。
よく憶えてないけど、そのときもそんな感じで
つい一人遊びに夢中になっちゃったんだと思う

跳ね返って来たボールをノーバウンドで壁に返し続けるのはかなり難しくて
何回かチャレンジしてたら
ボールが壁に当たらず、
校庭の隅っこの植木の方まで転がっていってしまった。

俺が校庭の隅までボールをとりに行って戻ろうとしたら
後ろから
「キャ」
という女の小声の悲鳴が聞こえてきた。

振り返ってみたら、
ちょうどさっきボールが転がっていた辺りに美佳がいた。
パンツは膝の辺りまで下ろしてて
スカートはまくれてた。
和式便所で用を足してる最中のような格好だった。

俺 「あqwsでfrtgyふじこlp」
美佳「え??え??ケンタ?」

慌てて美佳に背を向けて「ごめん」と謝った。
美佳「ちょ・・ちょっ・・ごめん。あっち行っててくれる?」
俺 「分かった」

美佳に背中を向けて遠ざかる途中、後ろを見ないまま美佳に言った。
俺 「なあ。紙かなんか持って来た方がいいか?」
美佳「………お願い。ダッシュね」

最寄りのトイレまでダッシュして
トイレットペーパーを丸めて美佳のところへ持ち帰った。

美佳「こっち見ないで。
   後ろ向きに歩いて持ってきて」

俺が美佳のところに戻ろうとする途中、美佳が遠くから叫んだ
俺はかなり遠いところから
後ろ向きに歩いて美佳に近づいて、後ろを向いたまま紙を渡した。
美佳は植木の中に身を隠してた。

美佳「あーあ。またやっちゃったよ。最悪」
そんなことを言いながら、美佳は処理をしてた。

その後、美佳と俺は一緒に帰った。
家は隣同士だからずっと一緒だった。
そのときは、俺もいろいろ多忙になってたから
美佳とはあまり話す機会がなかった。
久々に美佳と話したんだが、結構楽しくて
夢中になって話したのを覚えてる。

そのときの瞬間移動だが、
どうも美佳は自宅で用を足してる最中
学校まで移動してしまったらしい。
だから、帰るときの美佳の履物はトイレスリッパだった。

家の前まで来て別れ際に
「今日はありがとね。
ごめんね。いつも迷惑掛けちゃって」
と美佳は俺に礼を言った。

今頃になってお礼言うなんて
もしかしてこいつ、お礼を言うタイミング探してたのか?
なんてこと考えたら、妙に美佳がかわいらしく思えた。

中学に入ると、俺は私立で美佳は公立に行ったので
美佳とも自然に疎遠になってしまった。

疎遠になったとは言っても、会えば話すし
美佳の家族と俺の家族で一緒に旅行なんかにも行ったりしたけどね。
でも、小学校低学年のときのように、
毎日話す兄弟同然の関係じゃなくなった。
一緒にいる機会も少なくなったんで
その頃は美佳の瞬間移動に立ち会うこともなかった。

この頃、美佳にも彼氏ができた。
もともと外見も性格も悪くないやつだし
妙な偏見さえなければ、そこそこいけるやつなんだよな。

その後、美佳の瞬間移動に俺が巻き込まれたのは、
高一の夏頃だ。

その日は確か夏休みの最中で、俺は家でゲームしてたんだけど
2階にある俺の部屋の窓にカツン、カツンと
小石をぶつけるやつがいた。
誰かと思って窓を開けて下を見たら
うちの庭先で、植木の影に隠れるようにして手を振るやつがいた。
美佳だ!

驚いたことに美佳は一糸まとわぬ姿で
肌を隠すようにうずくまって
泣きながら俺に向かって手を振ってた。

血の気が引いた。
美佳が性犯罪に巻き込まれたと思った。
あわてて階段を駆け下りて、美佳の元へ向かった。

俺 「どうした?大丈夫か?誰にやられたんだ?」
美佳「ちょっと、落ち着いて。
大声出さないでよ。
そうじゃなくって、またやっちゃっただけだって」

性犯罪じゃないと分かって安心した俺は
「はあ~」とため息をつきながら
その場にへたり込んでしまった。

美佳「………ねえ。座ってないで早く服貸してよ」

消え入りそうな涙声で美佳が言った。

俺 「え?あ?あ、うん。そうだな。」

そう言って俺は、自分が着てたTシャツとジャージを脱いで美佳に渡した。

取り乱すとは、こういうことを言うんだろう。
美佳のところに向かうために外へ出ようとしたとき
玄関の鍵がなかなか開けられなかった。
ツマミを回すだけでロックを解除できる簡単な鍵なのに
手が震えてツマミがなかなか回せなかった。

一度部屋に戻って帰って、
クローゼットからまだ着てない自分の服を持って来ればいいのに
俺はそんなことも思い浮かばず、
その場で自分の着ていた服を脱いでパンツ一枚になったりしてる。

サンダルも履くのも忘れて庭までダッシュしたから
庭の小石か何かで足を切ったようで、足の裏から血も出てた。
しかし俺は、足を怪我したことにさえ、しばらく気付かなかった。

とりあえず美佳を俺の家に入れて
詳しい事情を聞いた。

美佳は家でシャワー浴びてる最中に瞬間移動してしまったらしい。
移動先は、美佳の家の前の路上だったそうだ。
慌てて家に戻ろうとしたけど
1階は、玄関も窓も全部鍵がかかって入れなかったらしい。
そのときは、家には美佳しかいなかったから
中から鍵を開けてくれる人もいない。

途方にくれてしまって
自分の家の庭の隅で
うずくまって声を出さないように泣いてたら
ちょうど俺の部屋に人影があるのが見えたから
やむなく最後の手段として俺に助けを求めたそうだ。

美佳「本当、ありがとね。
   まさか泣いてくれるなんて思わなかったよ」

美佳は涙声になりながら俺に礼を言った。

どうも俺は、泣きながら美佳に駆け寄ったらしい。
そういえば、玄関の鍵がなかなか開かないとき
周囲の景色が急にぼやけてあせった気がする。
でも、そのときは自分では泣いていることに気付かなかったから
隠しようがなかった。

美佳にお礼を言われて、俺は耳まで赤くなるのが分かった。
泣くなんて、とんでもない大失態だ。
と当時の俺は考えた。

俺「まったく。まぎらわしいんだよ。
  乱暴されてもないのに、泣くんじゃねえよ」

俺は照れ隠しに悪態をついた。

美佳「むー。これでもあたし、花も恥らう女子高生だよ
   いきなり裸で路上に置かれたら、泣くに決まってるじゃん」
   半泣き半笑いで美佳は言った。

しかし、冷静になって考えてみると、結構すごい状況だ。
俺の家には、美佳と俺の二人だけ。
しかも美佳はノーブラ+Tシャツで
汗なのかシャワーのお湯なのか分からないが
とにかく白地のTシャツは濡れててかなり透けてる。

それにしても、美佳がこんなに巨乳だとは思ってもみなかった。

濡れた髪が妙に色っぽい。。。。

さっきは取り乱してて特に何も感じなかったけど
冷静になってくるにつれて、
さっき見た美佳の裸が、自然と脳裏に浮かんでくる。

これはまずい。。。

俺 「美佳んちの人、何時ごろ帰ってくんの?」
美佳「一番早く帰ってくるのは志穂(美佳の妹)かなあ。
   それでも夜7時ごろだと思う」

時計を見たら、まだ午前11時過ぎ
たしか、その日は俺の家も夜まで俺一人だけって日だった。
こりゃダメだ。
そんなに長い時間、俺の理性持ちません。

俺 「あのさ、美佳。おまえ胸のサイズいくつだ?」
美佳「え?何よ?
   突然、なんてこと聞くの?」

美佳はオーバーアクションで驚いた風のポーズをとって言った。
動いたときに揺れる胸に目線を向けないことだけで
俺は精一杯だった。

俺「いや、そうじゃなくてさ。
  俺、ブラとか買ってくるよ。だからサイズ教えろよ」
美佳「ええ?いいよ、いいよ。そこまでしてくれなくても」

美佳はまた、俺の苦労も知らずブンブンと
オーバーアクションで手を振った。
反動で胸も一緒に揺れたが、頑張って胸を見ないようにした。

俺「…でも、そのかっこはまずいよ。
  ……その……乳首透けてるじゃん」

このセリフ言うときは絶対美佳の胸を見ちゃダメだと思った俺は
美佳から完全に視線を外して言った。

美佳「え?」

美佳は慌てて胸を隠した。

美佳「………(///)
   …じゃ、お願いね。
   ………70のEだから」
俺 「え?何だよ70って?EはEカップのことか?」
美佳「……そう。EはEカップだよ。70はアンダー(///)」
俺 「え??アンダー?なんだよそれ?
   それよりおまえ、Eカップもあんの?マジで?」
美佳「………いいから早く買いに行けよ」

そんな感じで美佳から女性の下着のレクチャーを受けた。

俺が靴を履いてるとき美佳が後ろから声を掛けた。
「ケンタ、○○に行くといいよ。安いから。
あ、ワゴンに入ってる中の一番安いのでいいからね」
このときの美佳の声はすごく優しくて、
さっきのエロトークを怒ってないみたいで安心した。

俺 「分かった。そこ行く。
   とりあえずさ。待ってる間に髪乾かしとけよ
   ドライヤーとか整髪料とか、好きなの使っていいから。

   それから、俺の部屋に服用意しといたから、それに着替えとけよ
   その服、俺が着てた服だから汚いし、もう濡れてるし
   いつも俺が家で着てるやつだから、
   親が帰ってきてその格好見たら不審に思われるから」
美佳「ありがとケンタ。いろいろ悪いね」

この日、俺は生まれて初めて一人で女物ランジェリーを買うのだが
まだ恥じらいのある高校生だった俺には、想像を絶する苦行だった。
下着に触れる勇気はなく、触らないように下着を品定めしてたら
「何かお探しですか?」と店員に声を掛けられた。
今考えれば、緊張した顔して遠慮がちに下着を選んでる俺に
店員は助け舟を送ってくれたんだろうけど
当時の俺は、不審者としてこの店員に通報されるんじゃないかと思って
かなりあせった。

なんとか買ってきて、下着を美佳に渡した。
美佳「えー?上下オソロじゃん。ワゴンのやつでいいって言ったのに」
俺「え?ブラとパンツって、揃えるもんなんじゃないの?」
美佳「普段はそろえたり、そろえなかったりだよ。
へへへ。でもまあ、ありがとね」

美佳は着替えのために弟の部屋に行った。
俺は自分の部屋のベッドのへりに腰掛けて
ボーと美佳の着替え待ってた。

美佳が俺の部屋の扉を少しだけ開けて
「ケンタ?」
と俺に声を掛けた。
扉の方を見ると、少しだけ開いた扉の隙間から
美佳が目だけを出してこっちを見てる。
俺「おう、着替え終わったか?」
美佳「へへへ」

美佳はいきなり扉を全開にした。
なんと、美佳はさっき俺が買ってきたピンクのブラとパンツしか着てなかった。
恥ずかしそうにモジモジしながら、
美佳は下着姿でドアの前に立っていた。

美佳「へへへ。どう?似合う?」
俺 「あqswでfrtgyふじこl?」
俺に下着姿を一瞬だけ見せると、美佳はサッと壁の影に体を隠して
顔だけをドアから覗かせた。

美佳「へへー。いろいろお世話になったからね。サービスだよ。サービス。
   もう見られちゃってるし、これぐらいならね。
   あ、でも調子に乗って襲ったら殺すからね」


顔だけドアから覗かせながら、美佳はいたずらっぽく笑いながらそう言うと、
逃げるように弟の部屋に戻って行った。

結局、その後は何事もなく
美佳とゲームしたり、お茶飲みながら近況報告したりして
時間をすごした。

この日のことは鮮烈な記憶として俺の心に深く刻まれ
その後俺は、この日のことを後何度も回想することになる。
その後、俺が野外露出系AVに傾倒して行ったことは言うまでもない。

もし俺が本当に襲ったら、
もしかしたら美佳は抵抗しなかったのかもしれない。
でも、俺は美佳との関係を壊したくなかったし
なにより、美佳の信頼を裏切るみたいで嫌だった。

この事件後、俺と美佳は急速に仲良くなった。
小学校の頃みたいに毎日会話するようになった。
もっとも、会話手段は、高校生らしくメール中心に変わってはいたが。

高校の頃、加藤というやつから電話をもらった。
美佳が中学の頃から付き合っているという彼氏だ。
どうも美佳は、幼なじみと最近また仲良くなったことを
彼氏に話してしまったらしく
美佳の彼氏も、俺を知るところとなったようだ。

電話で加藤は、美佳のことで俺と話がしたいと言った。
もしかして俺が美佳の恋路を邪魔してんのかと思ったから
美佳と俺とは何でもないとか、いろいろ加藤に弁解した。
加藤は、そういう話をしたいんじゃなくて、
美佳の幼なじみとして相談に乗ってほしいことがあるんだと言った。
結局、喫茶店で二人で会うことになった。

加藤は美佳と中学のとき同じクラスで、高校も一緒だとのことだった。
背は高くて俺と同じぐらい。
だが、俺とは比較にならないほど端整な顔立ちだった。
切れ長の目は男の俺から見ても魅力的だ。

話を聞いたら、中学ではバスケ部のキャプテンで
高校でもバスケを続けてるとのことだ。
バスケ部らしく手足も細くて長い。
話し方も嫌味が全くなくて、スポーツマンらしい。
笑顔もさわやかで、かなり好感が持てるやつだった。

なんでこんなハイレベルな男が美佳と?
美佳もまあ、レベル的には上位なんだろうけど
この男とは明らかに釣りあってない。

加藤「実はさ、今日相談したい美佳のことなんだけど…」
自己紹介とか、俺と同じ小学校だったやつの話とか
簡単な雑談をした後
加藤は深刻な顔になって、本題を切り出した。

どうも美佳は、加藤の家に遊びに行ったときに
また瞬間移動をしてしまったらしい。
一緒に加藤の部屋のコタツでケーキを食べてて、
加藤がテレビのリモコンを探すために美佳に背を向けて
振り返ったら美佳がいなかったとのことだ。

何かの冗談なのかと思ってコタツの中とか探したけど、
部屋中探しても美佳は見つからない。
リモコン探すときに部屋のドアは加藤の視界に入ってたから
ドアから部屋を出たことも考えられない。
何があったのか分からず呆然としたそうだ。

その後5分ぐらいしたら、加藤の家のベルが鳴ったらしい。
玄関を開けてみると、靴を履いてない美佳がいて
さっきケーキを食べるときに使ってたフォークを持ったままだったそうだ。

どこに行ってたのか問いただしても
美佳は冗談を言って答えをはぐらかしたそうだ。
理由を言いたくなさそうな美佳を見て
加藤はそれ以上追及しなかったらしい。

たとえば、美佳と一緒にいるとラップ音が多いと言った。
加藤の家は鉄筋コンクリートなので
普段は家鳴りなんてほとんどない。
でも、美佳と一緒にいるときはやたらと家鳴りがするし
ときどき明らかに家鳴りの音とは違う、
人間が手を叩いているとしか思えないような不自然な家鳴りが、
かなり近い場所で聞こえたりするらしい。

それ以外に、テーブルの上に置いてあったコーラのボトルが
テーブルが揺れてもいないのに、いきなり倒れたことがあったらしい。

前々からなんとなく
もしかして原因が美佳なんじゃないかという疑念があったらしいが、
今回の瞬間移動が決定打になって、疑念か確信に変わったらしい。

「美佳のことは今でも好きだけど、でも、さすがに気味が悪くて……」
と加藤は言った。

加藤は、幼少期から美佳のことを知ってる俺に
小さい頃そんなことがなかったか、
原因に何か心当たりはないか尋ねてきた。

俺は自分が知ってることを話そうかどうか迷ったが
結局本当のことは言わず、心当たりはないと答えた。

美佳本人が加藤に言ってないのに
恋愛の当事者でもない俺が
勝手に美佳の隠したい事を話してしまう権利なんてないと
そのときは考えたからだ。

結局、俺が何か思い出したら連絡するということで
加藤とは別れた。

確かに、美佳と一緒にいると怪現象が多い。
家鳴りやパーンという何かが破裂するようなラップ音はしょっちゅうだし
変わったのでは、人が下駄を履いて歩いているような
カラン、カランという音を廊下からするのを聞いたこともある。

ちなみに、下駄の音のときは
音源と思われる廊下に通じるドアを開けたら、廊下には誰もいなくて
誰もいないのに、下駄の音だけが
廊下を抜けて玄関から出て行くように消えて行った。

目覚まし時計がスーッと音もなく机の上を滑るのを見たこともあるし、
水道のレバーが勝手に降りて水が流れ出したこともあるし、
リビングのシャンデリアがグワングワンと地震でもあったみたいに動いたこともある。

いろいろあったけど、美佳が原因なんだと思えば
俺は気に留めないことができた。

まあうっかりテレポーテーションするぐらいのやつだし、
無意識のうちにサイコキネシスとか使っても、別に不思議でもないか
と考えてた。

まだ常識というものが形成される前から美佳と接してきたためか
超能力なんて存在して当然という考えが、俺の心のどこかにある。
超能力を迷信と切って捨てるやつを見ると
口に出して否定こそしないものの、
心の中では「バカだなあこいつ」と
まるで、インチキ宗教を妄信する者を見るような目で見てしまう。

そんな俺と「超能力なんてありえない」という
社会常識がしっかり出来上がってから
美佳に接した加藤とでは
どうも持っている常識というものが少し違うんだと思った。


結局、美佳と加藤は別れた。

別れた話を聞いたとき
俺は、加藤に正直に言わなかったことを後悔した。

俺が話さなければ、
加藤は同じ小学校だったやつらからの話しか耳に入らないことになる。
そうなると、加藤の耳に入ってくるのは
誹謗中傷の尾ひれがついた酷い話ばっかりだろう
もしかして、美佳と加藤が別れる原因を作ってしまったのは
自分なんじゃないかと思って、
自分の浅はかさを悔やんだ。

美佳にそのことを一言謝りたくて仕方なかったけど
俺が謝ったら、恋人を気味悪がる加藤の冷たい目と
加藤に漏れ伝わった周囲の人々の美佳に対する評価を
美佳に再確認させる結果になって
それでまた美佳を傷つけるんじゃないかと思って
謝るのは止めておいた。

自分がスッキリするために美佳を傷つけるんじゃ
本末転倒もはなはだしい。

別れたことを美佳から聞かされた後、俺は美佳を誘ってカラオケに行った。
何曲か交互に歌った後、また美佳の番になった。
美佳の入れた曲は、イントロが終わってもうもう字幕が出始めているのに
美佳は歌い始めようとしなかった。

ふと美佳を見ると、
美佳はマイクをギュッと握り締めたまま
うつむいて静かに泣いてた。
いたたまれなくなった俺が美佳の肩をポンポンと叩くと
美佳は俺の胸に顔をうずめて、声を出して泣いた。
思わずもらい泣きしてしまったが、
美佳に気付かれないように必死で隠した。

カラオケ行く前は
「よーし。今日は朝まで歌うぞー」
なんて笑いながら言ってたのに。

美佳は、つらい時でも無理して笑うやつだ
今までの周囲の状況が、美佳をそういう性格にしたんだろう。
でも、こいつのそういうところは好きじゃない。
見てられない。

美佳が加藤に本当のことを話せなかったのも、無理はないと思う。
俺たちが住んでるところは、最近開発が進んで住人が多くなったとはいっても
まだまだ田舎らしい迷信めいた考えを持ってる人が多くいるところ。
建物は新しくなって、舗装路や街灯も増えたけど
人間はあまり変わってない。
近くの部落で殺人事件が起こってからは、みんな戸締りするようになったけど
小学校の頃は、一家全員出かけるときも戸締りなんてしなかった。

俺たちの親の世代は、神隠しを信じてる人も多かったし
狐が人を化かすということを未だに信じている人も多い。
俺の父親もそうだ。
なぜなら、俺の父親も、狐に化かされた本人だからだ。
そんな土地柄も手伝って、美佳はずっとつらい思いをしてきた。

みんなで美佳の友達の家に遊びに行ったときも
美佳だけが、その子の家に入れてもらえなかったこともあるって
前に美佳が話してくれた。

美佳を追い出した親からすれば、自分の子だけは
なんとしても神隠しの巻き添えになるを避けたかったんだろう。
親の気持ちも分からないこともないが、
罪もない子どもを必要以上に恐れる大人たちの態度には憤りを感じる。

幼少期からそんな感じだったし、
それが原因で同級生からいじめられたりもしたから、
自分が普通の人とは違うことを知られるのを、美佳は恐れている。
加えて、振られるかもしれないという恐怖が加われば
美佳の性格を考えれば、話すことはできないだろう。

実際、超能力者にしろ、ラップ音にしろ、ポルターガイスト現象にしろ
それほど恐ろしいものじゃないと俺は思う。
ラップ音だって「うるさい」という以外に
何か困ったことがあるのだろうか。
ポルターガイスト現象で物が勝手に動いたら、「片づけが面倒」という以外に
何か不都合があるのだろうか。

そういうものをいかにも恐ろしいものであるかのように話し
他人の恐怖心を煽って喜んでるやつらを見ると憤りを感じる。

そういうやつらの勝手な妄想の吹聴してるおかげで
苦労してるやつが、俺の近くにいる。
そういうやつらが面白おかしくオカルト話をして楽しんだために
美佳のようなやつが世間から偏見の目で見られ
孤独を味わうはめになってる。

「おまえら、そういうことはほどほどにしろ」
この一言が言いたくて、この話しを書いた。
後悔はしていない。

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