小さなキャンプ場

725 :霊感餅:2008/02/25(月) 12:35:22 ID:ZZ7NFRj+0

大学に入ってからの話。1年の夏。

東京の大学だったから、一人暮らししてた。
夏休みもバイトがあったから、田舎にも帰らず、何となく東京。
8月に入ってから、バイト先の連中とキャンプに行くことになったんだ。
東京から案外近いところにある、山奥の普通のキャンプ場へ、男3女3。
夜、バイトが終わってからワンボックスのレンタカーで2泊2日。

到着したのが10時ごろ。
あまり流行ってないみたいで、他に客もなし。
小さなキャンプ場で設備だってそんなに良くなかったから、こんなもんかと思ってた。
この時期に楽々と予約できるんじゃぁね。
バイトの疲れもあって、その日はさっさとテント張って寝てしまった。
翌日はキャンプ場からそれなりに奥に入ったところにある小さな滝で水と戯れたりしてる連中を残して、
オレともう一人(男)はもう少し奥へ入って釣りを。

田舎の人間だから、山には慣れてる。山の中なんてのはだいたい鬱蒼としたもんだ。
でも、何か違う気がする。
異質な重さって表現したらいいのかな、湿度の高さからくる重さとは、どうも違う気がする。
魚も釣れないし、昼も近づいてるし、早々に引き上げることにして滝まで戻ったんだけど、誰もいない。
なんで?

早足にテントまで戻ったら、みんなはご飯を食べてた。
戻ってこないから先に食べてたってさ。なんだよそれ。
そのまま何となく酒盛り状態。
ダラダラし続けて、晩ご飯はレトルトのカレー。なんちゃってキャンプだからそんなもんね。

9時近かったかな、花火しようぜ、ってことで滝まで行くことになったのは。
月明かりもあったし、ちゃんと懐中電灯もあるし、大丈夫だよねってことで。

最初のうちはハデな花火でキャーキャーいってたんだけど、
シメの線香花火に火を着けるころにはみんな静かになってた。
だからこそ、あんなものに気が付いたのかもしれない。

滝に目を向けたことに意味なんかない。ただなんとなくだ。
滝の上に何かがいた。
人?
 
 
 
…落ちた。
 
 
 
あちこちの岩に叩きつけられる音が数回したあと、水面に叩きつけられる音が耳の奥に響いた。

それほど高低差や水量はなかったけど、かなりゴツゴツした岩肌がむき出しになっている滝だ、
落ちればどうなるか。
滝壺のすぐ脇の浅いところに落ちたはずだ。
駆け寄って懐中電灯で照らしてみたけど、人影らしきものも見えない。

滝壺に飲まれたか?
あそこから落ち…あれ?
人?
あ。
 
 
 
…また落ちてきた。
 
 
 
岩や水面に叩きつけられる音も、さっきと同じ。
なるほど。
何かいたの?なんて言いながら何人かオレのそばまで来たんだけど、ごまかした。
大きな魚が跳ねたように思ったんだけど気のせいだったって。
わざわざ話して聞かせることもないもんね。

帰る前に管理人に曰くを聞いたりするのも止めた。面倒だし。
流行ってない理由はこれだったのかも。

今でも落ち続けてるんだろうか、あの人。
男の人だったみたいだけど。

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