茂った稲の中から

638 :1/2:2007/04/29(日) 12:17:40 ID:J+Ho7B400

じゃあ自分も、あんまり恐くはないんだけどほんのり恐かった話。長くてすまん。

高校1年生のころ、島根の片田舎に住んでた。電車が1時間に1本とかそういうレベルの田舎ね。
高校に入学してしばらく経った頃、帰りの電車で偶然中学の頃仲良くしてくれてた子と会って、久しぶりだから一緒に帰ろうって話になった。

田舎だから商店街みたいなものはないが、それでもやっぱり必要なので小さな商店が道路沿いに1件建っている。
定休は日曜、閉店は毎日18:00だったばずだ。
その周辺には民家と、あとは全部田んぼ。
夏服を着ていたから多分そういう季節だったんだと思うが、どの田も稲が青々と揺れていた。
商店は既に閉店していたと思うので多分18:00を過ぎていたが、周囲は丁度日暮れのほの暗い黄昏時だった。

田んぼの中の商店と、道路を挟んで歩道があって、自分達はその歩道を歩いてた。

位置関係
民家 l 商店 l "'"'"'"'"'"'"'田んぼ"'"'"'"'"'"'"'"'
――――――――――道路――――――――――
    歩      ○友人(チャリ付き)
    道      ○自分

久方ぶりの再会で、普通に雑談してたとき自ふと友人の向こうの田んぼを見ると、白いシャツだかトレーナーだかを着て、頭は天然パーマなのか何なのかやたらともさもさした黒髪の少女だかおばさんだかが茂った稲の中から肩から上だけ出してこっちを見てた。
両極端だが、黄昏の逆光で顔の造作なんて全然見えなかったし、田舎だとイモい女の子はああいう格好で、ちょっとくたびれたおばさんもああいう格好をしてたからだ。
自分は心底びっくりして、友人に上手く説明できないながら田んぼの方を向くように伝えたが、友人が振り向ききる前にそいつは身を屈めて田んぼの中に消えてしまった。
友人には随分訝られたが、自分はそういう冗談を言う方ではなかったんで余計怖がらせてしまったらしい。
結局、そいつが消えた田んぼの方には、気味が悪いし近寄れなかった。
いや、もし万が一それが野グソをしてたオバハンだったりしたら、発覚させたりしたらそれこそ悪いしとも思い。

帰宅してすぐに家族にも話したが、「とうとう白昼夢まで見るようになったの」と言って取り合ってくれなかった。
後日その道を車で通った母からは、「あそこ見て来たけど、人が隠れられるような丈じゃない」と言われた。
それ以降そこを1人で通っても何も見ることはなかった。
自分の住んでいた地方では案山子というものも見かけたことはなかったし、一体あれが何だったのかは未だにわからないままだ。

後日談になるが、その後同じ高校の友人にもそのときの話をしたら、確かに話の内容もだが、お前の語り口の方がなんだか稲川淳二じみていて恐いと言われた。

長い上に、ほんとにあんまり恐くないな。読んでくれた人ありがとう。

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