ハトコの話

609 :ハトコの話:2007/04/28(土) 13:25:45 ID:4D3iNCd+O

おそらく見える・わかるんだと思うハトコがいる。
そいつとの最近の話を一つ。


近くに住むハトコが「鍵忘れて家に入れなかったー」と行ってうちに来たので、しょうがねえなと家にあげてあげた。
ハトコの親が帰ってくる時間までそいつは俺の許可を貰ってゲームをし、俺はハトコのヘタさをからかいながら宿題をやっていた。
うお、とか、ぎえ、とかダメージをくらうたびに奇声を発しながら、俺に「かわいそうなくらいヘタだなおまえw」とつっこまれながらやってたんだけど、ハトコがふと画面以外のところに目をやった。
テレビの向こう側(斜め上?)。

つられてそっちを見たけど何もない。
障子張りの戸と壁があるだけだ。
ハトコがよくやることだった。
何かに熱中しいても人と話てても、ふと視線をどこかにやる。

上機嫌でコントローラーを握っていたハトコがだんだんと奇声を発しなくなってきた。
顔をみると真顔でなんだか嫌そうな顔をしている。
なんなんだよ、からかいすぎたか?と思っていると、またハトコがまたテレビの斜め上を見る。
少したつと廊下で爆睡していたはずのうちの犬が唸り始めた。
うるさいぞ、と戸を開けると犬は風呂場に向けて唸っていた。
そっちをみるけど何もない。
ハトコを見るとちょうど目が合う。
俺ははっとした。
ハトコがふと目をやった場所――その方向には風呂場がある。

「どうしたんかね」
そういったハトコの声がわざとらしい気がした。考えすぎかもしれないが。
俺は怖くなって、唸る犬を居間に入れた。
しばらく落ちつかなげにしていたが、俺にぴったり張り付くと大人しくなった。
気のきいた冗談も言えなくて、俺は犬を撫でて黙りこんだ。
風呂場の方向がやたらと気になる。
ハトコは相変わらずゲームをしていた。
表情は見なかった、というかまだなんか嫌そうな顔してたらどうしようと思って見れなかった。

ハトコがゲームをやめて、笑顔で犬と遊びに始めたところで、やっと空気が軽いものになった。
怖がっていた自分が馬鹿馬鹿しくなった。

そのあと俺より頭のいいハトコに数学を教えてもらって、ハトコは帰ると言った。
そして帰り際に
「まあ、不安なら、なんかあれば塩でも舐めとけばいいんじゃない」
…やっぱ見えんのか、お前。というとハトコは
「見えないってば。お前がすごい不安そうだから言っただけ」
「…なんもないよな?」
「動物は敏感だからねーそういうのに」
とニヤニヤと怖がらせるようなことを言ってハトコ帰っていった。



つい一昨日の話でした。
いつも風呂までついてくる犬がついてこなくなったよ。
そして風呂場に向かって威嚇までする始末。
なんかいるんだろうか。
怖くて仕方がない。

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