休みの日には山登り

202 :1/2:2006/09/01(金) 03:56:37 ID:J7DdMND3O

俺が体験した山でのことを書く。
三年前まで俺はよく仕事の休みの日には山登りをしていた。
昔から自然が好きで自然と触れ合っていると癒されるし山を登りきった後の爽快感といったら言葉に表せないものがあった。
といっても山について専門的な知識もなく登山家とは言い難い只のにわか登山者だった。
その日は新しい山を登る予定だった。
元々その山を登るきっかけは
友人に誘われ川遊びに出かけた際にこの先登山コースと書かれた古い木の看板を見つけたのが原因だった。
その日から今度の休みはその山を登ろうと決めていた。
それでいよいよ登ることになった訳だがこの山についての情報は一切ない。
調べたものといえばその山の地方の天気予報ぐらい。
今までも登る山の情報は調べた事がない。
何というか何も知らない方がモチベーションが上がったし自分が若いせいかどんな困難にあおうとも乗り切れるという変な自信があった。
そしていよいよ登山開始。登山自体は順調だったが途中途中の山の頂上までの経過看板を見るに思った以上に標高は高かった。
登ることに夢中になっており気付いたら既に夕焼けになっており夕日が沈みかかっていた。
俺はその時初めてしまったと思った。
引き時を間違えたのだ。
このままでは頂上に着くにしても引き返すにしても夜になってしまう。
悩んだ末前に進むことにした。
ここまで来たら頂上までの方が引き返すより近いし頂上なら1日過ごすにしても過ごしやすいと思ったから。
こうゆう時は変に動くよりその場で夜が明けるのを待った方がいいんだろうが俺にはとてもじゃないがそんな度胸はなかった。
それでも頂上まではまだゆうに2時間はかかる。
やがて日が沈み周りは真っ暗になった。

俺は予め用意していた懐中電灯を点けた。
周りは不気味な程に静かだ。虫の音だけが聞こえる。
俺は懐中電灯で足元を照らし続け慎重にそれでも足早に細い山道を登り続けた。
怖い怖い怖い。早く頂上に着きたい。
もしも女の人の叫び声が聞こえたらなどと下らない妄想を頭に巡らせていた。
だいぶ登った。
頂上まであと1時間以内には着くだろう。心に少し余裕が出てきた。
そんな時だ。
目の前の細い山道の足元を照らしている懐中電灯の光の中に2本の細い足が映った。
子供の足のようだ。
下駄をはいている。
俺はその時点でそれが生きている人間ではないことはわかった。
当たり前だ。こ
んな山道に。
夜の山に。
下駄をはいた子供がいる訳がない。
俺は心の中で止めろ止めろと叫んでいたがその2本足の上の先には何があるのかという好奇心?に負けてしまい懐中電灯の光の先を上に向ける。
光の中には小さな男の子が映っていた。
坊主頭にボロボロのハッピみたいなものを着た男の子。
目がない。目ん玉がない。
キレイに両目の目ん玉だけがくり抜かれている。
目ん玉のない目で俺をじっと見つめている。
俺はいつの間にか膝をついていた。
逃げなきゃ。
ヤバイ。
これはヤバイ。
体が動かない。
声が出ない。
金縛りだ。
悲しきかなこの時俺は生まれて始めて初金縛りにあった。
男の子は俺に近づいてくる。
目ん玉のない目で俺の顔を覗きこんでくる。
俺の目の前に男の子の顔がある。
その距離は30cmもない。は顔を背けたいが動かすことができない。
俺と男の子がずっと顔を見つめ合わせたままどれぐらい時がたっただろうか。
俺自身は何十分にも感じたが実際は数分くらいだろう。
すると男の子の口が動いた。
ニターと笑いだした…と思ったら突然、口を大きくカパッと開いた。そこで俺は気を失った。
すまん思ったより長くなっている。
次で終わりにする。
まあこんな夜中だし誰も読んでないと思うが…。

どれぐらい時がたっただろうか…。
気がつくと周りがぼんやり明るくなり始めていた。
本格的に意識を取り戻した俺は転げるように山を降り始めた。
もはや頂上なんてどうでもいい。
一刻も早く山を降りたい。それだけだった。
流石にバテて時折少しの休憩をとりながらも無事山を降りることができた。
周りはすっかり夜は明けていたが曇り空でどんよりとしていた。
コンクリートで舗装された道に出てようやく心に安堵が訪れた。
その時だ。
「カランッ」
俺は気にせず歩く。するとまた後ろから
「カランカランッ」
幸いにも体は動く。
俺はボロボロの体に鞭をうちまた走りだした。
するとすぐ後ろから
「カランカランカラン!!」
明らかに何者かが追いかけてくる。
その何者かというのはもちろんわかっていた。
半泣きになりながら(いやたぶん泣いてたと思う)やっとの思いで車にたどりつく。
これでエンジンがかからなかったらどうしようと思ったが幸いにもエンジンはかかった。
逃げるがてらに最後に山の登山道の入り口を見てギョッとした。
その下駄をはいた男の子を始め10人ぐらいの目ん玉のない子供達がじっとこっちを見つめていた。
終わり。
それ以後は山を一度も登っていない。

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