風景画のスケッチ

36 :本当にあった怖い名無し:2006/08/26(土) 13:26:52 ID:RsKbYiS30

リア厨のときの体験なんだが、
直接幽霊を見たわけではないし別の要因があったのかもしれない。

中2の夏休みだったと思う。
その年に所属してた美術部他全ての文化部の廃部が決定した。
大半の仲間は運動部に振り分けられたんだけど、
運動が苦手な俺は死んでも運動部なんて行きたくないんで、
友人と一緒に学年主任に抗議して何とか卒業まで美術部に残った。

そんな経緯で夏休み中も友人と二人で学校に出てきて部活してた。
その日も部活として風景画のスケッチをしていた。
場所は廃部前に使っていた四階の美術室ではなく、
その下の階の一年教室と二年教室の中間にある多目的教室を割り当てられていた。
朝10時ころから窓の外の高架線や体育館をスケッチしていたのだが・・・。

正午に近い時間だったと思う。
その日は曇っていて薄暗かったので教室の電気をつけていたのだが、
それが突然消えた。
あれ?っと思って友人とスイッチをいじるがまったくつかない。
停電か?と思って二階の職員室にいってみたところ、
電気のついた職員室で宿直の中年の先生一人がテレビを見ていた。
きっと三階のブレーカーが落ちただけだろうと、そう思い込むことにした。
しかし、三階にいるのは俺と友人だけで電気も多目的のしかつけていない。

違和感は募るばかりであったが、それでもスケッチを続けることにした。
電気が未だつかない薄暗い教室で会話もないまま弁当を片付けた。
1時ころになってパシパシと音が鳴って蛍光灯がついた。
俺たちは明かりが復活したことに安堵したが、
異変はまだ終わったわけではなかった。

明かりが再びついたことで安心した俺たちは、
さっきまでことは気にしない方向で昨日のテレビとか成績とかの話に花を咲かせていた。
不気味な違和感などさっさと忘れたかった。
この階には二人しかいないんで、話に夢中になっていたんだと思う。
俺はエキサイトすると声が大きくなるんで、
友人に言われるまでその音に気付かなかった。

コツ、コツ、コツ・・・・。

口を閉じて耳を澄ませば、確かに廊下のほうから足音が聞こえる。
声でかくて下の先生が様子を見に来たんだ!やべ!っと思った。
俺たちは廊下に背を向けてスケッチしながら騒いでいたんで、
その足音の強弱で先生の接近を感知しようとしていた。
注意されるのを覚悟で緊張して耳を澄ませていた。
硬い革靴のようなもので廊下を歩く音が響く。
ただそこに、何か違和感というか引っかかりがあった。

職員室にいた先生はジャージにスニーカーではなかったか?
いや、きっと別の先生が学校に来たんだ。
何故、足音は近付きもせず、遠ざかりもせず一定なのだろう?
俺は音痴だし、きっと気のせいだ。
何で足音がずっと続いているのだろう?
そんなに長い廊下じゃないのに・・・。

足音はずっと聞こえている。
しかし、いつまでたっても窓に映る引き戸のガラス窓には通行人が映らない。

じわりじわりと恐怖感が背骨を登っていく。
ずっと黙っていた友人が「廊下に出て正体を確かめよう」と言った。
少しパニックになりかけていた俺は同意の返事ができなかった。

ガラッ。

引き戸を開ける音に足音がかき消される。
「何もいない。足音も聞こえなくなった・・・。」
友人の言葉に振り返れば、確かにもう足音は聞こえない。
恐る恐る引き戸から顔だけを出して、右の一年教室側と左の二年教室を交互に見やる。
何もいなくて安心したが、薄気味悪さは消えない。
部活の予定時間は午後3時までだ。早く時間が過ぎれば言いと思った。
スケッチが完成に近付いたころ、異変は再び起こった。

ギ、ギギィ・・・、ガタン、ガタッ。

木と鉄パイプでできた椅子が引きずられるような音がした。
今度は左隣の2年1組教室からだ。誰かが忘れ物を取りに来た?
いや違う。今度はまったく足音がなかったし、引き戸を開ける音もなかった。
再び起こった異変に友人と顔を見合わせる。今度は俺も友人について隣の教室をのぞきに行った。
薄暗い教室を引き戸のガラス窓越しに覗き込む。
椅子は全て机に納まっている。やはり薄気味悪い。
思い切って教室に入ってみた。そして手近な椅子を引いてみる。

ガタッ、ギギィー・・・。

やはりさっきの音は椅子を引いた音だ、と俺たちは確信した。

これ以上俺たちは学校にいるのが嫌になった。
多目的教室に戻り、さっさとスケッチブックやペンケースを片付ける。

コツ、コツ、コツ・・・・。
ガタッ、ガタッ、ギギィーッ!

職員室の先生に挨拶もそこそこに学校から逃げ帰った。
家に帰って今日停電がなかったか?と弟に聞いたが、やはり、停電なんてないと返事が返ってきた。
それ以降、たびたびこのポルターガイストもどきは起こったが、音だけで実害はなかった。

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