インターホン

954 :本当にあった怖い名無し:2006/08/23(水) 07:22:40 ID:nbeVW3Sq0

霊が居るところではよく機械が異常動作をするというがこれもきっと、その類の話かもしれない

友人のアパートには、電話とモニタが一体化したような形のインターホンが設置してあってなかなかに便利だったりするのだが、これが最近、変な動作をすると言う。
何でも、インターホンも鳴っていないし受話器も外れていないのに、いきなり画面に光が灯って、外の様子が見えてしまうそうだ
賑やかし好きな友人は「霊だ霊だ」と騒ぎ立てるが、そこに行き着くのは流石に時期尚早と言うもの…
とりあえずは、常識的に大家なりに連絡を入れて修理してもらう事を薦めておいた
さて、それから一月ほど経ち、その友人の部屋に遊びに行くと、玄関横の壁に真新しいインターホンの受信機を見て取れた。
どうやらアレから大家に相談して、ついぞ一週間ほど前に外機も内機も纏めて新しいものと交換してもらったらしい
それから今日まで、前に言っていたようなおかしな出来事があったかと訊ねると友人は「まったくない」と嬉しそうに首を横に降った。やはり、機械の故障が原因だったようだ
まあ、そうそう何でも霊の所為にされてはたまらないと言うものだ
まあ、そんなわけでその日はその部屋に泊まる事になった。
夕食を軽く終らせて適当に酒を飲みながら、あれは夜中の零時を過ぎた辺りだっただろうか、
トイレを済ませて薄暗い廊下に出た俺の視界に、ぼんやりと光るものが飛び込んできた
それは照明と言うには余りにも薄暗く、そもそもあんな位置に照明があるはずがない
あそこにあるのは、そう……



インターホンの内機だ

俺は、胸に渦巻く嫌な予感を抑えながら、ゆっくりと近づく。淡い灰色とも青色ともつかない光を放つ画面に、誰もいない外の様子がぼんやりと映し出されている
一体、こんな夜中に誰がインターホンを鳴らしたって言うんだ?
いや、そもそもインターホンなんて鳴ったか、聞いたか? 答えは勿論、ノーだ。
あのインターホンの音はそもそもそんなに小さくない。部屋に居ても絶対に聞こえる筈だ
それなら、受話器が外れでもしたのだろうか…ゆっくりと手を伸ばして受話器を握り、その可能性も直ぐに費えた。
受話器はしっかりとフックの上に乗っている
じゃあ、これは何だ。どうしてインターホンの画面に、外の映像が映っているんだ?
誰がここに来たんだ? いいや…それとも、今まだここに何かが居るとでも言うのか?
誰もいない外の映像をじっと見つめながら、俺は受話器を握る腕をほんの少しだけ持ち上げると間髪入れずにそれを下ろした
ぶつりと言う音と共に、画面は何事もなかったかのように暗転する
俺は無言のままに部屋に戻ると、努めて何もなかったかのように振る舞い、そのまま徹夜をして朝早くにその部屋を後にした

それ以降、俺はその友人の家には一度も行っていない
今もあの部屋には、姿の見えない何かが毎夜のように訪れているのだろうか

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