木っていうのは、霊体が宿り易いんだよ。

235 :本当にあった怖い名無し:2006/08/05(土) 01:08:32 ID:oM98R7pS0

高3の時、美化委員で一緒になった同学年の飯島っていう暗い奴がいた。
俺はそこで知り合うまでネクラで陰気で飯島のことが嫌いだった。でも話せばそいつは色々霊に関する話を持っていて
見た目どうりの不気味な奴だ、と思いつつも俺は飯島に興味深々だった。

美化委員では朝の清掃活動をしなければならない。朝の六時から。
委員会は3チームに分けられ、俺は第三美化チームだった。10人弱。水曜日担当の通称「三美化」。

その当番の日、先生が「お前らは校門前」「お前らは駐車場」みたいに指示を出し班は分散して清掃をする。
俺は飯島と、2年生の女子が2人(A,Bとする)。計4人で駐車場の掃き掃除を任命された。
校舎にコの字状に囲まれた駐車場で、先生の視界から外れていた俺たちは必然的にサボりだした。(っつーか俺がサボろうと提案した。)

4人で朝からだるいねーみたいな話をしたりしてた。そのうち二年生のAが「朝の学校って全然怖くないですよね。」といった。
飯島は何か言いたげだったが黙っていた。そもそも彼は女子と話したことが無さそうで、悶々としていた。

その流れでBが「うちの高校、七不思議とか無いんですかねー何にも聞かないですよね。」って言った。
俺も飯島も高校3年間、七不思議なんて聞いたことが無いし、「無いなら無いほうがいいよね。」って結論になった。
さらにその流れでみんな怪談を披露し合った。でも飯島はずっと黙ってた。
Aが言う「朝、怖い話してもやっぱり全然平気ですねー。飯島先輩は怖い話ないですか?」

飯島が言った。「あっちの木のあたり掃除しない?葉っぱ落ちてるし。」

俺たちは全く掃除しないのも後ろめたいので同意した。飯島は木の葉を掃きながら話し始めた。
「木っていうのは、霊体が宿り易いんだよ。」

俺はおおお、ついに来たか出し惜しみしやがってこの野郎!と思った。

飯島「霊は水が好き。海や川。湿気も好きだからトンネルやお風呂もね。」
  「木には沢山の水分がある、新鮮な水分がね。それに不動だから居心地が良いんだ。柳の木の下に幽霊が出るっていうけど、
   それは昔街路樹として柳が多様されてたからであって、実際はどんな木も一緒。木に宿り居座る霊を”木霊”っていうんだ。」
  「木霊は、こだま。ヤッホーと呼びかけて、ヤッホーと帰ってくる。あれが木霊の仕業だって考えられてたりもした。」

俺らは感心して聞いた。飯島は続けた。

飯島「でも実際は声が山の斜面に反響してるだけ。多くの場合はね。」多くの場合?と俺。
  「霊が呼応する場合もあるってことさ。もし勇気があれば樹木に向かって話しかけてごらん、返事が帰ってくるかもよ。」
  「木陰が涼しいのは何でだろうね、マイナスイオンだとか言われてるけど。実際は霊の仕業だったりして。」

AB「わーおもしろーい。」女子は大喜びだった。

俺はなんだか飯島に全て持っていかれた気がして悔しかった。そのうち先生がやってきてサボってるんじゃない!と叱責された。
そんなこんなで清掃活動が終了し、俺と飯島は3年の校舎に向かった。

俺 「朝は幽霊がいないから怪談話してもゾクゾクせずに済むな。」と俺。
飯島「朝、夜なんて関係ないよ。霊はいつもいる。」
  「さっき君らが背を向けてた旧校舎の4階、理科室か。窓から血まみれの男がこっちを見てた。」
  「マズイ匂いがしたから、木のほうへ逃げた。」


俺は朝っぱらから鬱になってしまった。
飯島に「あとで理科室行ってみようよ。」と言われたが勿論断った。

後日理科室の霊はどうだったか、と飯島に聞いたら「閉じ込めた。」

どこに?「木に。」俺はそれ以上問い詰めなかった。

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