叔父から引越しの手伝い

878 :本当にあった怖い名無し:2006/07/25(火) 03:04:04 ID:CjfGPo870

2年ほど前、私は叔父から引越しの手伝いを頼まれた。

引越し先のマンションは立地もよく、私が思っていたものの10倍くらい立派だった。
(自称)フリーライターという胡散臭い肩書きで、決まった収入もない叔父には
到底借りられそうにない立派な広々とした部屋だった。
12階建ての11階の部屋には私のほかに引越しを手伝いに来た叔父の友人と
私のイトコ(叔父からすると姪っ子)と叔父がいた。

荷物は部屋の中に運び込んであったので、部屋を掃除することになった。
わたしはガラスマイペットと雑巾を持って部屋中の窓を磨いていった。

ある窓に奇妙な汚れを見つけた。
通勤ラッシュなんかの後に見たことのある、人の顔の脂がベタッとついる
顔の形をしている汚れだった。
拭き取ろうとして、それが窓の外側についている汚れだと気づいた。
窓を開けようと窓を調べてみたが、その窓は羽目殺しになっていて開かない。
どうしてそんな汚れがついているのか不思議に思ったが、とりあえず窓の内側だけを
磨いて、作業を進めていった。

夕方、あらかた片付けも終わり、お酒をご馳走になった。
わいわい飲んで騒いでいると、電車がなくなってしまい、叔父の部屋に泊まることになった。

引越しの手伝いの疲れとお酒の力ですぐぐっすり眠り込んで、目覚めると朝だった。
起きて、コンビニから買って来たご飯を食べて、さてそろそろ帰ろうかなと考えた。

ふと、昨日の顔の汚れが頭に浮かんだ。
叔父にそのことを話すと気づいてなかったらしく、
どこの窓?と聞くので、叔父にその窓を見せた。
窓の汚れを見せた後、わたしは叔父と他のメンバーを残して、
「用事があるから」と急いで部屋を出た。

マンションの外に出て改めて、汚れのついていた窓を外から確認した。
足場もなく、工事の人でもなければ、あんな汚れをつけることが不可能のように見えた。

今日、叔父と汚れを確認したとき、汚れの顔の形が昨日確認したものと違っていた。
昨日見たときはほっぺたをぐっと押し付けた形だったのに、今日見たときはおでこを
ぐっと押し付けた形になっていた。

怖くなってきたので、深く考えないようにして、帰路に着いた。

あとから、引越しを手伝いに来ていたイトコに聞いた話なのだが、叔父はいわゆる
「訳ありの物件」を安く借りて、いろいろなところを転々としているとのことだった。
ライターの仕事のネタにするのか?と聞くと、そうではなく、ただ飽きっぽくて
いい部屋を安く借りたいからだそうだ。

あの部屋でなにがあったのかは分からないが、あれもそういう部屋を安く借りたものらしい。
叔父はその後も何事もなく1年ほどその部屋で過ごし、よその部屋に引っ越した。

おしまい

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