義理の祖父から聞いた話

422:名無しさん@おーぷん:19/02/28(木)16:30:33 ID:IbP ×

これは私が嫁の実家のある東北に遊びに行った時に酒の席で義理の祖父から聞いた話なんだが。

「そんな筈はないんだ!君達はイズム人だろう?その証拠に君は今イズム語を喋っているぞ?」
そのスーツ姿の黒人男性は流暢な仏語と訛りの強い英語や露語やアラビア語、中には聞いた事も無い幾つかの言語・・・
そして津軽弁で捲し立て空港で入管職員だった祖父に罵声を浴びせかけていた。
青森産まれ岩手育ちで津軽弁を理解出来る祖父がこの迷惑外国人への対応を任されてしまったのだ。
祖父が言う所によるとこの男性の主張は「自分はタリザレッドという国にあるスパルタクス銀行バマコ支店に勤める銀行役員で、
イズム国の博多という街で大事な取引があるので早く入国させて欲しい!」と言うものだった。
そんなタリザレッドとかイズムとか言う国はテレビで見た事も聞いた事も無いと祖父がいくら説明しても更に激昂させただけだったそうだ。

「仕事で博多に行きたいというのは分かります、でもイズムなんて国はどこにもありません。貴方が住んでるって言うタリザレッドなんて国はアフリカの何処にあるんですか?教えて下さい!」と言って祖父は世界地図を渡した。
男性は地図を手に取ると「ありえない!」といった驚愕の表情で暫く世界地図を眺めていた。
そして2分位経つとアフリカ大陸を指差して「ここにあった筈なんだ・・・タリザレッドが・・・まるで俺は狂人だな・・」と答えたそうだ。
男性はうなだれて椅子に腰掛ける。
ここは本当にイズム国じゃ無いのか?じゃあ君達は一体何人なんだ?と聞かれた。
「日本人です。」
としか答様が無かったと祖父は言っていた。
「分かった、それがここの常識なんだな?では私の頭が狂っているのだろう。この世界に対する何等の記憶も持ち合わせて無いんだ。もう狂人としか言いい様が無い。そうだろ?」男性はそう言うと何も喋らなくなった。

すったもんだの末最終的に男性は精神病院送りとなったらしい。

半年後、祖父はこの事件が忘れられず考えてあぐねた挙げ句にある仮説を立てた。
それは、イズム=出雲では?という物だ。
あの黒人男性はパラレルワールドから何等かの理由で飛ばされて来てしまったのでは無いか?
祖父は昔読んだ星新一の小説でそういう話があったのを思い出しまさかと思い歴史読本等も読み漁りながら半年掛けて仮説を組み立てたそうだ。
導き出した結論に驚いた祖父は何としても男性を救出しようと方々に色々とコネを頼り男性の保証人となり精神病院から退院させる事に成功した。
その後ある出版社の仕事を紹介したそうだ。
彼は今もライトノベル等の翻訳家として細々と日本で暮らしているそうだ。
祖父は出雲国の博多とはどういう街なのかとても興味を持って色々と男性に聞いてみたのだが平行世界の日本、つまり出雲では九州の大宰府辺りに首都があり出雲京と呼ばれている。
国旗が太陽では無くて月になっている(夜空を表す黒と黄色い月)。
イスラム原理主義テロリストは存在せず共産主義者が世界中で暴れ回っているがこの世界の様な共産国は一国も建国されていない。
イスラエル人や世界のユダヤ人は同じ様に経済や宗教に影響を与えているが一神教徒では無く多神教徒。
イスラム教やキリスト教も多神教。
ミトラス教やマニ教が消滅していない。
と言うか一神教がほぼ消滅しており一神教という単語が共産主義者への罵倒語として定着している。
例外としてアテン信仰が残ってる。
逆に共産主義者の自称として一神教とも言う。
朝鮮半島に国家は無く百済と新羅のあった部分がそのまま北アイルランドの様な飛び地となっている。
テラケーブルという名前のインターネットは存在する(当時はまだパソコン通信の時代は始まったばかりで祖父は彼の言うインターネットの意味をこの時は良く理解出来なかった)。
アメリカもハリウッドは存在する。
アメリカ南部がサウスアメリカ連合国という独立国だがカナダよりも地味で知らない人の方が多い国。
核兵器はまだ発明されていない。
宇宙開発はバンアレン帯を超える事が物理法則に反し不可能とされトンデモ扱いされている。
特殊相対性理論も知られていない。
だが国連がタイムマシン開発や宇宙開発をしているという都市伝説があり陰謀論者がテラケーブルで話題にするとアカウントごと削除される等の検閲があった(彼によると検閲はハリウッドの映画を売る為のおふざけだと多くの人々は思っていたとの事)。
宇宙人の存在は証明されており火星人とは超高性能望遠鏡で意思疏通が可能で火星人の映画を何作か観たらしい。
火星でも宇宙開発はトンデモ扱いされている。
彼はこの世界の火星が真っ赤な事にショックを受けていた。「火星で古代核戦争があったんだ・・・」と言っていた。
その他文字や発音、国名も差異がある等々かなりぶっ飛んでいる内容だった。
祖父は信じたそうだが私は今でも半信半疑だ。
普段真面目な祖父の口からこんなトンデモ話が出るなんて正直まだ現実感が無い。

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