227: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/11/01(火) 20:55:21 ID:kCazRrAc0
知り合いの話。
幼少時、実家の裏山で得体の知れない物を見たという。 
山道を歩いていると、すぐ目の前を黒くて長い物が通り抜けたのだ。大きい。 
蛇がするように横方向に見をくねらせながら、あっという間に藪の中へ消え去る。 
それが通り過ぎた道の上には、粘液を思わせる光った筋が残されていた。 
幸運だったのかどうか、彼の方にはまったく興味を示さなかったという。

家に帰ってから、父親に見たことを報告した。 
「鰻だろう。あいつら川から川へ移動する時、地の上を這いやがるんだ」 
縄をなう手を休めずに、平然と親父さんは答えた。 
釈然としない彼はこう付け加えてみる。 
「僕よりずっと大きかったんだけど・・・」

親父さんは生真面目な顔で頷きながら断言した。 
「大鰻だったんだな」 
この話題が続くことはそれきりなかったという。

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