クツムシ

504: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/31(金) 18:15:37 ID:mxuIMygD0
先輩の話。
学生時代、他校の者と一緒にキャンプした時のことだ。 
テントから出ようとすると、自分の山靴がなぜか二足ある。 
訝しく思いながらも、手近の一足を引きよせ履いてみた。

湿った泥に足を突っ込んだような、奇妙な感覚。 
突然痛みが襲ってきた。爪先を齧られているかのような激痛だ。 
のた打ち回る先輩の様に皆が慌て、とりあえず押さえ込んで靴を脱がせた。 
分厚い靴下に血が滲んでいる。

それも脱がせてみると、小さな歯型が沢山、足の皮膚に刻まれていた。 
薬を付けているうち、肝心の靴のことを思い出す。 
探してみたが既にキャンプ場のどこにも、脱がせた筈の靴は見当たらない。

「そういえば、この山にクツムシという虫が出ると聞いたことがある。 
 どんな虫かは知らないが、あれがそうだったのかもな」

引率の教師が一人、そんなことを言っていたそうだ。

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