アガザル

124: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/11(土) 19:13:40 ID:dkmdAXLW0

同級生の話。
彼は高校生の頃、帰宅途中に不気味な物を見たという。 
田圃に挟まれた狭い路の上で、何か真っ赤な物がゆらゆらと踊っていた。 
猿のようにも見えるが、顔がない。 
どうやら頭の天辺から足の先まで、赤っぽい毛で覆われているようだ。 
近よれずにいると、それは踊りながら田を横切り、じきに見えなくなった。

家に帰って家人に話してみると、お祖父さんの顔が険しくなった。 
「アガザルが出おったか。こりゃ注意せんといけん」

アガザルとは赤猿が訛った言葉らしい。 
その正体はわからないが、時折山から下りてくる化生の物なのだそうだ。 
直接は人に悪さをしないが、そいつが出るとまず火事が起こるのだと。

確かにその数日後、村のある家屋が不審火で焼け落ちたという。 
「俺が見た奴が本当に、火に関係あるのかどうかわからないけどな」 
彼はそう言って、話を締めくくった。

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