初恋

21: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/06/29(木) 23:39:50 ID:Ac1SH9tl0
夕方のキャンプ場で食事を終えた。 
川の両岸が、別々のキャンプ場になっている場所だ。 
昨年と同じ男がいた。
たまに行く山で、毎回顔を合わせる人物というのは 
少ないが、確かに居る。 
ごく普通の会社員であれば、週末と連休くらいしか 
山へは行かれないのだ。 
スケジュールが重なったとしても、不思議はない。

互いに、昨年見た顔だとすぐ気付いた。

相手の姿を見れば、山歩きが目的ではないとすぐ分かる。 
このキャンプ場が目的地だという格好だ。

彼は子供の頃から、この時期のキャンプを続けていると 
俺に話した。 
毎年、対岸のキャンプ場に来る女の子が目当てだと言い、 
頭をかいて笑った。 
10年以上にもなるらしい。

今年も、彼女の姿を見たという。 
今夜は来てくれますよ。 
年に一度だけ会うことを続ける二人。 
わずかな言葉を交わし、別れることを繰り返している。
ただ、と彼は言葉を濁す。 
彼女、いつまでも子供のままなんです。 
3回目に会った時から、ずっと同じなんです。 
知ってるんです。

一気に言い、俺を見た。 
邪魔しないで下さいね。 
そう言って、彼は顔を対岸へ向けた。 
きっと、彼の初恋なのだろう。

彼は今年も、子供のままの彼女と会うのだろうか。 
俺と彼が言葉を交わした数年後、あのキャンプ場は、閉鎖された。

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