しょりっ

437: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/07/22(土) 10:34:22 ID:bylFPANM0

友人の話。
山中の高速道路を走っていた時のこと。 
腹の具合が悪くなった彼は、最寄りのサービスエリアでトイレに行くことにした。 
無事にトイレに駆け込み、ホッと一息吐いていると。

 しょりっ しょりっ しょりっ

すぐ近くから、何かを混ぜるような音が聞こえてきた。 
ゆっくりと米か何かを研いでいるかのような音。 
自分の他には、誰も居なかった筈だけど。後から誰か入ってきたのかな。 
それにしても妙な音を立てるな、何をしているんだろう?

個室のドアを開けて出ると、音はパタッと止んだ。 
トイレには人っ子一人居なかった。背筋が冷えた。 
思わず個室を一つ一つ覗き込んでみた。 
どの個室も、白い和便器が座っているだけ。

立ち竦んでいると、どこからか再び「しょりっ」と聞こえてきた。 
ゆっくりと手洗いに向かい、出来るだけ落ち着いて手を洗う。 
鏡に自分以外は何も映っていなくて、本当に安堵した。
彼がトイレを出て行く時も、音は聞こえていたという。

仲間内でこの体験を話してみると、事も無げに言われた。 
「あぁ○○のSAでしょ? あそこって小豆洗いが居るよね。 
 何人からか話を聞いているよ。 
 SAが出来る前は近くの集落の小川に出ていたらしいけど。 
 人が沢山来る方が、小豆洗いも張りがあるのかもな」

運が良いなあ、と羨む仲間を尻目に、 
「妖怪って奴ァ昼間っから出るものなのか? 
 どっちにしろトイレで研いだ豆なんざ、俺ァ口にしたくはないね」 
彼はそう言って仏頂面をした。

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