咀嚼音

9: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/08/07(月) 00:43:49 ID:hUd7sg6j0
後輩の話。
学生時代に山の中、一人で藪漕ぎをしている時のことだ。 
いつの間にか、すぐ近くからおかしな音が聞こえ始めた。 
「ガツ・・・ムシャムシャ・・・」と、まるで何かを食べているかのような咀嚼音。

気になって周囲を見回したが、どう見ても藪の中には彼しかいない。 
出来るだけ早く藪を抜けることにした。 
そのうちに「ガリッ!」と固い物を齧り砕く音や、「ペチャ・・・ズズッ・・・」と 
汁気を啜るような音まで聞こえ出す。 
しかし相変わらず、何の姿も確認出来ない。

やっとの思いで藪を抜けると、背後から一際大きな音が投げられた。 
「ゲェッッップ!」と、やけに下品な音だった。

それを最後に、怪しい音は聞こえなくなったという。 
「無茶苦茶怖かったですよ、本当に」彼はそう言って口元を歪めていた。

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