共存

127 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/04/20(水) 20:14:28.62 ID:M9js9F/p0 [3/3回(PC)]
知り合いの話。
彼は電波中継棟のメンテナンスを生業としている。 
人里離れた山奥にある物が多いのだが、その中には奇妙な物件が偶にあるという。

「どうもね、中に何物かが入り込んでるんだよ。 
 錠が下りて閉まってるのに、開けるとムッと獣臭がする。 
 入ってみると、黒い毛で作られた、巣みたいな物が隅っこにあるんだ。 
 何かで固められてて、饐えた臭いがする代物が。 
 でもその中には何も居ないんだよねコレが。 
 何処から入り込んで、何処へ出て行ったんだろう?」

「残ってた毛を調べてもらったヤツがいたんだけどね。 
 数種類の動物の毛が混じっていたらしいよ。 
 だからやっぱり、何がその巣を作っていたのかは謎のままなんだ」

「同じ敷地内にさ、小さな祠があるんだよ。 
 聞いた噂じゃ、昔はその祠の中に巣が作られていたらしい。 
 局の建物が出来てから、いつの間にかこちらに移ってきたんだとか。 
 狭い祠より中継棟の方が居心地が良いのかね。 
 あそこも中はそんなに広くないんだけどな」

以前は巣を壊していたのだが、今はそのまま放っているのだそうだ。

「壊しているうちに、段々と邪魔にならない場所に移動しちゃって。 
 そうなると、何度も作り直させるのも悪い気がするし。 
 やっぱり共存共栄の精神だよね」

ただ、一体何と共存しているのかは、深く考えないようにしているそうだ。

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