新幹線の切符と小さな箱

151 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/02/20 00:40
目が覚めた。だが何かがおかしい。目を開けているはずなのに、何も見えない。 
濃い霧の中にいて視界が利かないという感じだ。それに何も聞こえない。 
ここはいったい何処なんだろう。 
しかも、昨日(正確には昨日かどうかさえわからないが)の記憶があいまいだ・・・ 
確か、遊びのつもりで見知らぬ女と一晩を伴にしたんだっけ。そして次の朝、ある 
男に渡してくれと、新幹線の切符と小さな箱を預かった。それでその男に会いに行 
くため新幹線に乗ったところまでは覚えている 
そのあとの記憶を懸命に思い出そうとしていたその時、誰かが自分の体に触れた! 
思わず「あっ」と声を上げた、いや上げたつもりだった。だが声が出ない。 
いったい、どういうことだ。 
どうやら俺はベッドの上に寝かされているらしい。起きあがろうとして上体を起こ 
そうとしたとき気付いた・・・ 

「な、ないっ・・・俺の両手両足がないっ!」 

院 長「あの患者に身内の者はいないのかね」 
婦 長「はい。両親はすでに亡くなっていて、兄弟や親戚の方もいないようです」 
院 長「うむ。それで、経過はどうなんだね」 
担当医「なんとか意識だけは回復したようです。だけど、あのまま死んでしまって 
た方が本人にとってはよかったと思いますが」 
婦 長「四肢切断に三重苦ですからねぇ。本人にとってこれ以上辛いことはないで 
しょうに」 
院 長「まぁ、自業自得ってもんだろう。しかし、いつまでもこんな患者をうちで 
預かるわけにもいかんからなぁ。いっそのこと、死亡したことにして人体実験に使 
うか・・・」 

3日後の新聞記事 
『新幹線の自爆テロ犯死亡――先日、新幹線の車内で爆弾を爆発させ、大惨事を引 
き起こした無職・大森和道容疑者(33歳)が昨夜収容先の○○病院で死亡した・・・』 

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