マンションのエレベーター - やるせなす中村豪

それじゃあ僕の実体験の話をさせていただこうと思います。
これは僕が仕事が終わって十二時から一時くらいに友達の家に行った時の話なんですけど、
その友達はマンションの九階に住んでいたんです。
それでエレベーターに乗り込んで九階のボタンを押したんです。
エレベーターが上に登って行く時に、三階で止まったんです。

普通の家って上を目指す人っていないじゃないですか。
会社だと勿論上の階に行く人は居るけども、普通の家だったら上を目指す人っていないじゃないですか。
エレベーターは降りるために使うんですから。
一階から登ることはあっても、途中の階から上を目指すことがあるってのはおかしいなって思ったんです。

それでエレベーターが止まって扉が開くんですけど、誰もいないんです。
その時明らかに誰かが入ってきたような感じがしたんです。

(うわ、嫌だなぁ)

そう思った瞬間に扉が閉まったんです。
そうしたらエレベーターが扉を閉めた途端に階のボタンがパパパパッとついて、僕が押していたはずの九階が消えたんです。

(えっ、何なんだろう)

そう思って九階を押すんですけど、つかないんです。
僕は一生懸命九階を押している中、エレベーターは一階ごとに止まっていくんです。
それでどうしても九階がつかないから、これはもう八階で降りて階段で九階に行くしか無いなと思い、僕は八階で降りたんです。
そしたら後ろから「あはははは」という子供の笑い声がしたんです。
後ろを振り向いてもやはり誰もいないんです。

それで階段を登って九階に行くと、エレベーターが九階についていたんです。
そのマンションのエレベーターというのはよくあると思うんですけど、中が見えるように窓ガラスがついているんです。
そこを見てもやっぱり誰も乗っているように感じなかったんです。
でもやっぱり

(何なのかな、子供がいたずらしているんじゃないのかな)

そう思ってエレベーターに近づいていったらうっすらと子供の頭らしきものが見えて、それでも僕は近づいていったんです。
でも感じるものってあるじゃないですか。
絶対こっちに来るなよというような。
でもそれでも僕が近づいていったら、子供がバンっとエレベーターの扉に張り付いたんです。
それで僕は一歩も近づけなくなってしまったんですけど、顔は見えなかったんですが、すごく怒っているような気配がしました。

その話を友達に当日するのは申し訳ないので後日話すと、そのマンションの柵から子供が転落して亡くなっている事故があったということです。

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