ある村の先祖供養 - 島田秀平
皆さんこの前のお盆、田舎に帰省された方は多いのではないでしょうか。 田舎ではそれぞれの地方によって昔ながらに決められた方法で先祖供養をします。 中にはかなり変わった供養の仕方もあるそうですが、このお話はある村で行われているとても変わった供養を体験した一人の女の子のお話です。 この女の子は都内に住む小学生の女の子なんですが、その夏はお父さんの実家に行ったんです。 場所は千葉県の北の方にある小さな集落。 お父さんは大学に行く時に東京へ住み始めてその後なかなか帰省をしなかったそうなんです。 その後お母さんと結婚した時に一度帰省をしただけ。 それっきり帰っていなかったそうなんです。 勿論その女の子もその場所へ行ったのは初めて。 普通お盆で先祖供養というとよくあるのが夏野菜に割り箸を刺して動物の形を作ってお供えをするとかですが、 この村はだいぶ変わった風習だったそうなんです。 中に三人四人入れるような大きな数珠を持って集まるそうなんです。 それでこの数珠の中に人が入るんですけども、毎年この中に入る人は変わってくる。 その年はその女の子の家族、お父さんお母さん女の子がその数珠の中に入ったそうです。 そしてその周りを数珠を持っている大人たちがグルグルと回りながらお経とも歌ともとれないような不思議な言葉をずっと唱え続けるそうなんです。 それである人の家に行けばその家の人もどんどん出てきて、練り歩いていくその行列に参加していくそうなんです。 ふと気が付くと、後ろに百人以上の行列があったそうです。 それでその皆がお経とも歌ともつかないような不思議な念仏を一斉に唱えている。 何だかその女の子はその大人たちが唱えている念仏が鬼気迫るようで、顔も険しいし、怖いなと思っていたんですが ただ頑張って数珠の中でとことこと歩いたそうなんです。 するとその行列がお父さんの実家の前に着いたんです。 女の子は(あーやっとこれで終わりだ)と思った瞬間、急に百人の大人たちが一斉に家族の方を向いて皆が今まで以上の大きな声で念仏を唱え始めたんです。 百人の大人の念仏。 鬼気迫る顔。 いよいよその女の子は身の危険を感じて、お父さんにこう言ったんです。 「パパ、これは絶対に変だよ。 怖いよ、早くお家に帰りたい」 必死にお父さんにそう訴えたんです。 するとお父さんは優しい声でこう言ったそうです。 「怖くなんかないよ。 だって、大人たちはみんな私達家族の供養をしてくれているんだから」 そこで女の子は気がついたんです。 そのお父さんの実家の仏壇、そこには女の子、女の子のお父さん、そしてお母さん、この三人の遺影が飾られていたんです。 実はこの話、この家にあったあるノートに書かれていた話なんだそうです。 そこには女の子の字で小さくこう書かれていました。 初めてお父さんの実家に行ったこと。 そこで変わった供養を体験したこと。 そして自分たちにお経を唱えてもらえたこと。 そこで初めて自分たちが死んでいることに気がついたこと。 その文章の最後にはこう書かれていたそうです。 『でもあんなにたくさんの方たちにお経を唱えてもらえて、私達は安心して成仏できます。 本当にありがとううございます』






