6 :名無しさん1/3:2009/03/14(土) 14:50:06 ID:vHFKKiys0
この話を時系列に沿って、その全てを語った事は一度しか無いです。
抜粋と形でも、記憶にある限りでは二回だけ。
どうしても長文になってしまうので、分割で書き込みします。
文章とかおかしかったら、済みません。

始まりは夢でした。

私が小学校一年生の時です。
通っていた小学校には、木造の古い体育館がありました。
誰が言い出したのかは知りませんが、床板の節穴から下を見れば
首の無いお地蔵さんや、人骨が見えると噂されていました。
体育館と接するようにお寺さんがあり、フェンスを越えればそこはお墓。
そう言う状況から出来た噂だと思います。
休み時間のたびに体育館の床下を覗き、○○が見えた、××が落ちてた!
そう騒ぐのが一年生間で流行ってました。
友達に誘われて、私も見に出掛けた口です。

ある日夢を見ました。
白い着物に、色あせたピンク系の帯を締めた女の人に手を引かれ、歩いています。
背後から母の声が聞こえました。
「その人は人間じゃないから、付いていっちゃ駄目だ。戻っておいで」
その言葉に驚いて、私はその人を見上げました。
見えたのは長い前髪の間からのぞく、形の良い鼻と色味の悪い唇。
妙にざらついた印象の、血色の悪い肌。
「人間じゃないんだ」
そう思った所で目が覚めました。怖いもの見たさの体育館通いは止めました。

私が小学三年生の、冬の事です。
外は雪でした。昼間でも暗かった事を覚えています。
私は窓に向かい合わせる位置で、コタツにあたって本を読んでました。
父親も居たと記憶していますので、日曜日だったと思います。
何の気なしに本から顔をあげ、窓の外へ目をやりました。
窓の外、見上げる位置で我が家の庭を横切る人が見えました。
雪の中白い着物をきて、ピンク色の帯を締めた女の人でした。
俯き加減のため見えるのは、長い前髪の間からのぞく鼻と唇。
今なら「見上げる形でその人を見た」と言う、状況の不自然さもわかるのですが
当時は疑問にも思いませんでした。失礼な人がいるな、程度の認識でした。

小学六年生の話です。
何月かは忘れてしまいましたが、その日は土曜日だったと思います。
居間にはコタツ+でもストーブを焚くほどでも無かったと記憶していますので、
多分十月頃のことだと思います。
姉は部活で学校から帰っておらず、祖母は買い物へ。共働きの両親もいません。
(当時は週休五日制は導入されていない企業が多かったんです)
家には私一人で、お留守番をしていました。
コタツにあたりながら本を読んでいました。本の題名も覚えています。

「日本妖怪大図鑑」、保育園の頃からの愛読書でした。
何気なく本から目をあげた時です。
目の前、一メートル程の位置に女の人がいました。
白い着物も、色あせたピンクの帯も。俯いた横顔も見覚えがあります。
彼女だ、そう思いました。
彼女は目の前を流れるような動きで横切りました。
私は目の動きだけで、ソレを見てました。消えた瞬間は覚えていません。
気がついた時には消えていました。
見てはいけないものを見てしまった、そう思いました。

中学三年の夏、もしくは初秋頃だと思います。
その夜、夢を見ました。
家の居間で、私は彼女に馬乗りになられ、首を絞められていると言う夢です。
人間じゃないから普通に抵抗しても駄目だ、私は必死にお経を唱えました。
夢の中の自分の声に驚いて、目が覚めました。
部屋の中が変でした。妙に静かで、空気が冷たいんです。
右側を下にした横向きで布団にいたのですが、何故か背後の気配がわかりました。
彼女がいます。俯いて、私を見ている。両の手は正座した膝の上。
気配が動きました。おそらくは彼女の右手、それが掛け布団に置かれました。
布団越しなのに、掌どころか指の感触まで腰に伝わってきました。
何をする気だ、と思う間もありませんでした。凄い力で身体を引かれました。
実際私の身体は「く」の字に曲がりました。

腰に食い込む指は痛いし、振り払おうにも身体は動かないし。
怖いと思うよりも、どうすんの!と言う焦りのほうが大きかったです。
何かの弾みで指先が動くと同時に、部屋の空気も含めて異様さは無くなりました。
彼女の気配もありません。慌てて布団から起き出し、部屋の電気を点けました。
時刻は午前二時半、少し前だったと思います。
パジャマを捲り上げ確認したところ、右の横腹に手形がうっすらと見えました。
なんかマズイかも、そう思いつつ二度寝しました。
(しっかり熟睡しました。恐怖心に持久力は無いです)

高校三年の、夏休み真っ最中の日でした。
休日の昼寝は私の習慣で、その日も自室のベッドで寝てました。
因みに中三の時とは別の部屋です。
確かに眠っているのに、部屋の中が見えていました。夢なのかな、と思いました。
ありえない位に部屋の中は明るくて、不自然だったからです。
右手側の、頭を向けている方の天井の角辺りから声がしました。
「いらっしゃい、いらっしゃい。こっちへいらっしゃい」
女の人の声です。妙に私の機嫌をとる様な猫なで声です。

言葉の合間に含み笑いが聞こえました。
言葉につられる様に、私の中から何かが抜け出る感覚がありました。
ベッドに横になっている私と、その私から僅かにズレて重なっている私がいる。
うまく言えないのですが、そんな感じです。
もしかしてコレ、幽体離脱?と思いました。
抜けて出る事に興味はありましたが、この状況ではマズイだろうとも思いました。
おいでおいでと言われる度に、私と私(?)間のズレは大きくなっていきます。
咄嗟にパイプベッドの端に掴まりました。

シーツやタオルケットに触れている感触は両手にあるのに、
同時に鉄を掴んでいる感触も、確かに覚えています。
念仏のように「いやだいやだ、絶対いやだ」と繰り返しました。
耳で自分の声を聞いたと言う覚えが無いので、
頭の中で思っただけか、ズレている私が言った物だと思います。
考え込んでいるかのように、女の人が黙りました。
暫くしてから「チッ」と舌打ちの音。気が付くと私は天井を見上げていました。
あの舌打ちは、今でも鮮明に覚えています。
あれ程憎々しげな舌打ちは、そうそう聞ける物では無いでしょう。

この日以降、彼女の姿は見ていません。気配も無くなりました。
小学一年生の時の、ちょっとしたお遊びが縁を結んじゃったのかな、と思います。
「絶対いや」と言い切ることで、縁が切れたのだと思います。
この体験のおかげで「私メリーさん、今貴方の~」系は苦手になりました。
怖い、と言うより本当に苦手です。

長文の上に、読みにくい文章でごめんなさい。

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