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603 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2013/01/12(土) 20:33:36.82 ID:wGmrCVnW0
山仲間の話。 

彼は仕事でよく一人山に籠もっている。 
ある夜のこと、焚き火の側に座っていると、我慢できないほど背中が痒くなった。 
手で掻こうとしたが、身体が硬いため、後少しのところで指が届かない。 

しばらく悪戦苦闘していると、不意に何者かに背中をカリカリと掻かれた。 
それが実にぴったりの箇所と強さだったので、驚くより先に 
「あぁ、そこそこ!」と快感に身を任せてしまった。 

大きくほぅっと息を吐いてから漸く、「……今の誰?」と思い至った。 
振り返ってみたが、背後には誰の姿も気配もない。 
もう朝日が昇るまで、ろくに眠ることが出来なかったそうだ。 
 

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