嫌な感覚

527 名前:陸自(現職) ◆d5En5fvPAM :03/06/14 10:18
ある時、私達の居住する部隊で大掛かりな部屋割りの変更がありました。 
その時の話です。 

1階に居住していた私達の中隊は、2階に移動する事となりました。 
移動に伴う後方付けもようやく一段落し、移動後の最初の夜にもかかわらず 
その日は居残り当番にあたってしまい、一人で寝る事となりました。 
部屋の先輩達は早々に特外(翌日の朝まで外出可)で出てしまい、する事のない 
私は早目に床に就いたのでした。 
寝始めてから、妙な事に気が付きました。 
何者かが部屋のどこかから、ジッと覗いているような、嫌な感覚がもの凄くするのです。 
怖い話などでよく使われる表現ですが、それはもう例え様の無いくらい嫌な感覚、まさに 
この世の者でない何かが訪れて私を睨んでいるかのような、とてもいやな感覚でした。 
(気のせいだ、大した事無い。)と、何度自分に言い聞かせてもその嫌な感覚は収まるばかりか 
ますます不気味さを増し、命の危険を感じさせるほどに強くなりました。 
私はもう完全にパニック状態になり、目を見開き、身体を強張らせてガタガタ震えていました。 
いま考えると、あんなに恐怖を感じた事が不思議なくらいです。 

2時間くらい恐怖におののいていたでしょうか。 
ふと身体が軽くなり、部屋に満ち満ちていた嫌な感覚も消えて、あたりは何時もと何ら 
変わらない雰囲気に戻りました。 
嫌な気分だったなと、改めて寝なおして次の朝を迎えたのですが、朝の点呼で当直から 
聞かされた話に、改めて昨夜の恐怖が蘇ったのでした。 
それは部屋割りをする以前に、私の部屋にいた隊員が夕べ遠く離れた実家から深夜の帰省中に 
交通事故を起こし、車ごと焼死した。と、いうものでした。 
事故を起こし焼け行く車中で、彼はさぞかし無念だったのでしょう、帰りたいという思いが 
部屋割りが変わったとはいえ、慣れ親しんだ元の自分の部屋に帰ってきたのかと思うと 
恐怖と一緒に、なにか切ない思いになったことが心に残っています。 

長文および乱文失礼しました。 

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