台湾 - 渡辺直美

うちのお母さんは台湾の方で、小さなころから頻繁に台湾に旅行に行っていたんです。
それで台湾に行くと親戚も結構居るので、親戚の家に泊まることが多かったんです。

その時はお母さんの妹さんの家に泊まらせてもらったんですけど、その家はマンションの五階にある家でした。
同じマンションの四階とか三階にも親戚が住んでいて、皆がわりと近場に固まって住んでいる感じです。
それもあって毎晩のように皆で集まって宴会をしていたんです。
場所は四階に住んでいるお母さんのお姉さんのところに集まっていました。

その日も遅くまで宴会をしていて、妹さんが

「私明日仕事早いから、先に帰るわ」

と言って五階の部屋に帰っていったんです。
その一時間後くらいにもうそろそろ宴会もお開きにしようかということで、皆はそれぞれの家に帰っていったんです。
それでお母さんと二人で私達も五階の家に帰っていったんですけど、台湾の玄関というのは二重になっていて、
内側に木の扉、外側に鉄の扉があるんです。
それで鍵を開けようとしたら、外側の鉄の扉が開かないんです。
中からチェーンがかかっているんです。

(中で何をやっているんだろう?)

そう思いながら扉を叩くんですけど、十分くらい経っても出てこなくて、やっと中の木の扉が開いたんです。
それで中をよく見てみると、妹さんが下着姿で口と手と足をストッキングで縛られた状態で立っていたんです。
おばさんが縛られた状態で一生懸命チェーンを開けて、ようやく扉が開いたら、妹さんが震えていて泥棒がいると。
泥棒が入ってきて、私は今こんな状態なんだと。
それで早く警察を呼んだほうがいいということになり、電気をつけて中を見ると、部屋中が荒らされていて、部屋の中には包丁とかも落ちているんです。

家の中で警察に電話をしようとしたら、家の中の回線とかも全て切られていて、お母さんが私に

「急いで親戚の人を呼んできて」

って言ったんです。

私は急いで親戚の家のところまで走っていたら、おじさんが立っていて、私がすごくテンパっているから、
おじさんが「どうしたの?」みたいな感じで声をかけてくれたんです。
私はそのおじさんに事情を説明したかったんですけど、台湾語が分からなかったので、全然言いたいことがおじさんに伝わらなかったんです。
おじさんもこっちが日本語だから、何を言っているの君は?」みたいな感じで、
「ちょっとごめんね、何言ってるか全然分からないから、どうしようも出来ないわ」という感じでいなくなったんです。

私はどうしようもできないから、早く親戚の家に行かないといけないと思って、
なんとか親戚の家まで辿り着いて、親戚を連れて五階の部屋まで戻ったんです。
それで皆で何か盗まれていないかチェックをしている時に、お母さんがその妹さんに「その人はどんな人だったの?」と聞いたら、
「小太りで青いチェックのポロシャツを着ていた。ソイツが犯人だよ」と話をしていたら、私そこで思い出したんです。

さっき話していたおじさんが全くその姿だったんです。
小太りで青いポロシャツを着たおじさんだったんです。
だから私がそこで台湾語を喋れていて、話をしていたら、もしかしたら殺されていたかもしれないという話です。

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