殺人事件のあった家 - 松原タニシ

事故物件住みます芸人の松原タニシと申します。
事故物件というのはいわゆる殺人、自殺、孤独死といった要因で人が亡くなった部屋のことを指すんですけども、僕はこの約五年間で六軒の事故物件に住んでいます。
関西と関東に今現在五軒目と六軒目を同時に借りている状態です。
関東がセカンド事故物件ということです。

何故事故物件に住むようになったかといいますと、とある心霊番組の企画で幽霊がものすごく出るという事故物件が大阪にあって、そこに若手芸人を実際に住ませて、部屋にカメラを備え付けて一日中ずっと撮影されるという。
それで幽霊が映ったら初めてギャラをあげるという企画だったんです。
その企画に抜擢されてから今日に至るというわけです。

中でも一番怖かったのは二軒目の事故物件です。
この物件というのは大阪市内で4.5畳と6畳の2DK。
ダイニングキッチンがついて2万6千円という値段だったんです。
まぁ相場の半額だったそうなんですけど、どういう内容かは分からないけども殺人事件があった部屋なんです。

そこを借りて初めて部屋に入るときに奇妙なことがあって、その物件に向かう途中車で移動するんですけど、交通事故直後の現場を3回通りかかったんです。
なんでこんなに交通事故が続くんだよと社内はざわついていたんですけども、3回目の事故現場に遭遇したときに僕の携帯電話が突然動き出して、

大学力が抜けるか、事故が起きないとね。
ハハハハハハハハハ

という文字が突然出てきたんです。

それで現場について部屋に入ると、畳が一枚だけ新しいんです。
こういうのってもしかしたらめくったら御札でもあるんじゃないかってなって、畳をめくってみたんです。
そうしたら御札はなかったんですけども、血が染み込んだ血痕の跡が残っているんです。

そしてお風呂場に行くと鏡が何故かペンキで塗りたくられているんです。
鏡が鏡の役割を成していないんですね。

そして鏡の下に洗面台があって、水はけがやたらと悪い。
そこを割り箸でつついてみたら、白髪が混じった人毛がたくさん出てきたんです。

そしてそれらを映像に残そうとビデオカメラを回すと、ビデオカメラが突然壊れてしまうんです。
あとは玄関のドアノブがやたらとガチャガチャと鳴る。
郵便受けにある郵便物が定期的に無くなる。

そんなことが色々あったんですが、その中でも一番奇妙だったのが携帯電話に謎の留守番電話が入っているんです。
こんなのかかってきた覚えは無いのになと思って確認してみると、

「ゴボゴボゴボゴボ・・・ゴボゴボゴボゴボ・・・」

という音が永遠と二分間入っているんです。
これは一体なんだろうと思っていたんです。

家の前に定食屋があったのでたまたまそこに行ったときに、そこの大将が
「にーちゃん見ーひん顔やけどこの辺引っ越してきたんか?」

「いやー、最近引っ越してきました。
 ●●に住んでます」
 
「お前そこあれやんか、息子が母親を殴って浴槽に顔を沈めて殺した部屋やろ」

その店で部屋で何があったかを全部教えてもらったんですね。
そう思うと留守番電話に入っていた音は母親の最後の断末魔が入ってしまったのかなとか、そういったことが考えられました。

その二軒目の物件から三軒目の物件に住んでいるときに、とあるニュースが飛び込んできたんです。
そのニュースというのが、僕が住んでいた二軒目の事故物件の犯人が通り魔事件を起こしたという事件です。
大阪市内でハンマーでお婆さんを殴りつけたと。

犯人って刑務所にいるはずじゃないですか。
これはどういうことかというと、母親を殺したあとの精神鑑定で不起訴になっていたんです。
それで刑務所には行かずグループホームに収納されて、そこを抜け出して早く死刑になりたいがために殺す相手を探していたと犯人は供述しました。

そう考えると玄関のガチャガチャと何回も鳴るドアノブ、郵便物が無くなるポスト。
これは犯人が部屋に戻ってきたのではないかなと。
あの時ドアを開けなくてよかったなという話でした。

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