仲の良い友達が - 木原浩勝
皆さんは仲の良いお友達を亡くされたことはありますか? 今日はすごく仲の良かった友人を亡くされた方の話をしましょう。 ある人が映像の専門学校に通っていたんです。 一緒に映画を撮っている仲間の中で仲の良かった人が何を思い煩っているのかどんどんと気落ちしていったんです。 そしてだんだんと授業にも出なくなって、ある時「じゃ俺帰るわ」と言って実家のある奈良県の方に帰ってしまったんです。 仲も良かったし、一緒に映画も撮りたかったのに残念だ。 そう気落ちしている時にその仲の良かった友人の葬式を知らせるはがきが届いたんです。 とても驚いたんですが、仲の良かった友人の葬式ですから、彼は奈良県の実家の方まで行って「この度はご愁傷様です」と頭を下げて回ったんです。 お葬式という場所は皆でワイワイ話す場ではないですが、大抵の場合故人の話が出るじゃないですか。 でもその仲の良い友人の葬式では彼がどうして亡くなったという話を誰も口にしないので葬儀に参加したものの何だか釈然としなかったんです。 どうして彼は亡くなったのだろう。 原因も何もわからないままとにかく式に参加したという形で彼は東京に戻ってきたんです。 「彼はどうして亡くなったんですか。 一体何が原因なんですか」 亡くなって気落ちしている悲しんでいる親類縁者にそんなことを尋ねるわけにはいかなかったんですね。 奈良県の方に知っている方もいないですしね。 彼は葬儀が済んで東京に帰ってしばらくしたある日のことです。 学校の課題を片付けていると何だか人の気配がするのでその方向を見ると、彼の部屋の台所の傍に窓があるんですが、彼自身タバコを吸わないのでタバコを吸う人間が遊びに来るといつもそこでタバコを吸っていたんです。 そこに葬儀に参加したばかりの友人が立っているんです。 そして窓を開けてタバコを吸っているんです。 彼が生前部屋を訪ねてきて、タバコを吸っていた時と同じような感じなんです。 いつもの格好でいつものポーズでいつもの雰囲気で。 普通なら怖いのかもしれませんがあまりにも自然体だったので、(あぁまた来てくれたんだ)というような感覚だったんです。 こっちが居るのかいないのかまるで意識していないように自然体なんです。 「おい」という風につい声をかけると彼がタバコを吸うのをやめてこちらを向いてゆっくりと歩いてくるんです。 自分のすぐそばまで来た時に仲の良かった友人がカクっと首を曲げて項垂れるポーズをしたんです。 そうしていると彼の首がニュッと伸びて、そしてスッと戻って自分の前で伸びて縮んでを繰り返すんです。 首がガクガク。 肩はそのままなのに首が振動して見えなくなるほどの状態なんです。 怖くなった彼は咄嗟に「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」と唱えて(成仏してくれ)と願ったんです。 そして顔を上げたときには彼は居なくなっていたそうです。 一回だけしか彼は訪ねてこなかったそうですが、彼のその姿を見た時に(これは葬儀の時に誰も死んだ時の話をしないはずだ)と思ったそうです。 仲の良かった友達は首を吊って死んだんだなと気づいたそうです。 それでも最後に彼は自分のことを訪ねてきてくれた。 当時は怖かったけれど良かったと今では思うそうです。






