霊媒師 - ますだおかだ増田英彦
ある番組の心霊ロケがあった時の話しです。
そのロケの企画というのが、有名な霊媒師の方が一般の方の家を訪れて、
その家に棲みつく霊を除霊してあげるというものだったんです。
その企画のレポーターが僕だったんですけど、僕は全く霊感がないんです。
行った先の家は一戸建てで、奥さんからの依頼だったんです。
その家に引っ越してから、不幸がすごく続いていると。
その奥さんは霊感がすごく強い方で、
奥さんが言うには、家の中を男の子の霊がうろちょろしているっていうんです。
だから誰もいなくても、おもちゃが勝手に動いたりだとか、
二階をタタタタタッと走っていく音が聞こえると。
その話しを聞いて、その有名な霊媒師さんが家の色々なところをまわって、
除霊をしていったんです。
「これで家の霊は全て除霊されたので、普通に暮らしていただいて結構です」
と、霊媒師さんによる除霊は滞りなく終わって、ロケは終わったんです。
それで霊媒師さんはロケ車に戻られて、僕だけがダイニングキッチンに座っていたんです。
パッと見ると、そこの家の奥さんが台所の隅っこで下を向いて、深刻そうな顔をしているんです。
それを見て僕は気になって、「どうかされましたか?」と声をかけたんです。
そうしたら、奥さんがバッと僕のほうを見て、
「あの人は本当に霊が見えるんですか?」って聞くんです。
「あの、業界ではすごく有名な方ですよ」と僕が言うと…
「じゃあどうして気づいてくれないんですか?」
「あの人がこの家に来てから今もずっと、霊が私の足にしがみついているじゃないですか!」
って奥さんが言ったんです。